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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜>掲示板

公開 メンバー数:6人

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  • from: エリスさん

    2009年03月31日 15時53分13秒

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    お知らせ

     明日になってから「お知らせ」を書くとエイプリルフールで嘘になってしまうので、今日のうちに書きます。
     毎週金曜日に更新している小説ですが、今週は明後日の木曜日に更新します。
     よろしくお願いします。

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  • from: エリスさん

    2009年03月28日 16時34分58秒

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    ゲットしました!


    ずっと売り切れたままになっていたドロンジョ様のミニタオル、ようやく手に入れました。

     艶やかですねェ〜!
     アニメ版とはかけ離れたお美しさに、萌え萌えしちゃいます(~o~)
     こうゆう人が恋人になってくれたら、なんでも貢いじゃいそうです。

     深キョンのドロンジョには、それほど萌え萌えしないんだけどな。とうとう私も二次元キャラに恋するタイプになっちゃったんだろうか?

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  • from: エリスさん

    2009年03月27日 14時42分12秒

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    「箱庭・62」
     「私ね、あなたにあんな酷い態度を取ったのは、あなたにもっと闘争心を燃やして欲しかったの。喬志のこと、私から奪い取って欲しかった。あのまま、あの人を一人にしたら、あの人がすさんで行くの、目に見えてたから。――少しは効果あったみたいね。あなたがこんな大胆なことしてるんだから」
     「そうですね……確かに、私がこうして母親になろうと決心したのは、来目さんとのことがあったからです。私にとっては良かった……でも、彼にとっては……」
     ますます苦しめる結果になっている。
     杏子は気持ちを落ち着けようとするのか、白湯を一口飲んで、吐息をついた。
     「結婚しようって、言わなかった?」
     「……言われました」
     「だったら、やっぱりあの人のためにもなってるよ」
     「それは違います。あの人は私に同情してくれているだけです。自己犠牲です。私が来目さんの代わりになんて……」
     「そういう考え方しないで。もっと素直にあの人の言葉を受け止めてやって。私、あなたに私の代わりになって欲しいなんて思ってない。あなたはあなたとして、喬志のこと想っていてほしいのよ」
     「変ですよ、来目さん」と、私はきっぱりと言った。「自分の恋人に、他の女を勧めようとするなんて。戦国武将の妻が自分の懐妊中に、妾として侍女を夫に差し出すことがあったそうですけど、来目さんのは明らかに、自分が身を引いて私に譲り渡してるじゃないですか」
     「いけないこと? それは」
     「いけないわ。あの人のことを思うなら、むしろ大石さんと離婚することを考えるべきじゃないですか」
     「……できると思うの? そんなこと」
     「難しいでしょうけど、でも裁判でもなんでもして……」
     「そういうことじゃなくて……私が、喬志の傍にいられると思うの?」
     しばらくの沈黙。
     「紅藤さんて、私の家なんかより厳格な家庭で育ってるから、もっと貞操観念が高いかと思ってたわ。――私があの人の傍にいるってことは、あの人も汚れることになるのよ。そんなことできるわけないじゃない! だからと言って自殺することも許されない。あの時まで、クリスチャンだってことを重く感じたことなんてなかったのに、私の周りには幾重もの枷がはめられている。私が罪を犯したわけじゃないのに!」
     「でも、今さっき〈クリスチャンはやめた〉って言ってらしたじゃないですか。それならもう、何の問題も……」
     「幼いころから培ってきた思想は変えられないものよ。特にこういった問題は。――あなたには、分かってもらえないかもしれないけど……」
     そう言われてしまうと、確かにキリスト教の思想は私の人生とは正反対と言わざるを得ない。いろいろな宗教を研究してはいても、私の根本は仏教思想にある。そうでなかったら千鶴と結婚したいなどとは考えなかっただろう。
     私と杏子では、立場が違うのだ。
     「……どっちにしろ」と、私は言った。「あの人が決めることです。あなたとよりを戻すか、私と地獄を見るか。でも、思うんですけど、きっと喬志さんなら、汚れているとか、傷ものだとか、そういうことは考えないに入れない人だと思いますよ。そんなこと言ったら……あの人にとっては、妹さんのことも蔑(さげす)むことになってしまうじゃないですか」
     「聞いてるの? 史織さんのこと」
     「直接聞いたわけではありませんが。来目さんはやっぱり、聞いてるんですね」
     「ええ……ひどい事件よね。その時、史織さんは五歳だったそうよ」
     「……幼すぎる……」
     「うん……こんな言い方するのはひどいかもしれないけど、同じ女として、すぐに亡くなって良かったのかもしれないわ」
     「そうですね……生きていても、辛かったと思います」
     また、沈黙してしまう。
     重い口を先に開いたのは、杏子だった。
     「確かに、喬志にとっては、どんな目に合されていても、妹っていうのはずっと清浄なイメージの中で生きていくのよね。だから……だから、あなたに傍に居てあげてほしいの」
     「……え?」
     思わず聞き洩らすところだった。「何故、そこで私が?」
     「ああ、そのことは知らなかったのね。あなたね、史織さんとそっくりなのよ。面影がどこか」

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  • from: エリスさん

    2009年03月20日 19時21分03秒

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    春休み興行

     明日から例のごとく、うちの映画館が一時間早くオープンするので、

     また私の起床時間が一時間早くなります。

     そう、午前3時起きです!(^o^;

     起床時間が元に戻るまで、このサークルの更新もかなり縮小されると思いますが、お許しください。

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  • from: エリスさん

    2009年03月20日 16時04分19秒

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    「Re:箱庭・61  書いた本人にも理解しがたい」
     十年前の私は、こうゆう解釈をしていたのか……。


     いや、確かに振られた相手に対して、素っ気無い態度は取るようにしていましたけどね。なんか迷惑だろうし。他人の振りしてくれていたほうが、相手も気を使わなくていいかなっと……。

     でも沙耶のはやり過ぎなような気がする、今は。


     いまさらだけど恋愛って難しいよ、38歳になった私でも(^_^;

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  • from: エリスさん

    2009年03月20日 15時59分54秒

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    「箱庭・61」
     「来目さん……私のこと、心配してくれてるの?」
     私がそう言うと、何か言いかけたが、彼女は口をつぐんでしまった。――意地悪なことを言ってしまった、と私は後悔した。彼女の非情な態度は演技だったと、もう分かっていたはずなのに。
     「大丈夫ですよ」と私は言った。「少し前まで風邪を引いていて、そのせいで面やつれしてるでしょうけど、もうなんともありませんから」
     「そう……それならいいの」
     あっ、今一瞬、聖母の微笑みになった。こうして見ると懐かしい。やっぱり私は、この人が好きなんだわ。
     彼女を玄関の方へ案内し、家へと上げる。居間へ行くには当然のごとく台所を通る。彼女はテーブルに乗っているケーキを見て、ハッとした表情を見せた。
     「……喬志の?」
     私も、あっ、と思う。そうだ、彼女が知らないはずはないのだ。
     「違いますよ。暇だったから作ってみただけ。来目さんも良かったらどう?」
     すると、テーブルの下でじっと待っていた飛蝶が、抗議するように鳴いた。「夜にね」と言っておいたのに、私たちだけ先に食べるのが許せないのだろう。
     「ハイハイ、あんたにもあげるから」
     「……いいわ」と、ボソリと彼女がつぶやいた。
     「え?」
     「……甘いものは、食べたくないの」
     「……そう?」
     嫌いではなかったはずだ。「喬志のためのもの」だから食べたくない――そうゆうことなのだろう。
     とにかく、彼女を居間へ通し、席を勧める。そして会社でそうしていたように、お茶ではなく白湯を出した。(クリスチャンは刺激物を口にすることを禁じられているため、お茶、お酒、煙草は厳禁)すると、彼女は苦笑いをしてこう言った。
     「私、キリスト教からは離れたのよ」
     「え? 改宗されたんですか?」
     「破門された、って言い方のが合ってるかしら。父に、おまえのような奴は神前にいる資格がないって……なんせ、婚前に妊娠したから……」
     「でも、それは!」
     言いかけて、私は口を閉じる。彼女も驚いたような表情をしていた。
     「知ってるの?」
     何も言えないでいると、「そう……」と呟いて、彼女も視線を落とした。
     「……来目さん……」
     「“来目さん”か……。以前はそんな風に呼ばなかったのにね。……まあ、私が“紅藤さん”って呼ぶようになっちゃったからだけど……」
     「あの……でも“大石さん”とは言い馴れなくて」
     「……そうね」
     お互い、間を起きながら話している。空気があまりにも重いのだ。
     「いつ、こちらに?」
     「一昨日から来ていたのよ。大石が伯父さん――社長にね、子供見せたいって言うから。それで、私もくっ付いて来たの。久しぶりに友人にも会いたいし」
     「今、お子さんは?」
     「社長の家に泊まってるから、社長の奥様に預かってもらってるの。それで昨日、志津恵と会って……あなたのことを聞いて」
     「……怒ってますか?」
     と、私は当然のことを聞いた。それなのに、彼女は首を横に振っただけだった。
     「安心してください。私には結婚の意思はありません」
     「紅藤さん?」
     「あの人を束縛する権利も資格も、私にはありません。あの人は、一生あなたの……」
     「どうして!」と杏子は言った。「どうしてあなたってそうなの! いつだって自分を押さえ込もうとするの? 喬志のことが好きなんでしょ? だったらもっと貪欲になりなさいよ。会社にいた時からそう。あの人が一人っきりでいる時は話しかけるのに、誰かと一緒だと知らん振りもいいとこ。赤の他人みたいに振る舞って……」
     杏子が意外なことを言うので、私は驚いてしまった。
     「それが、当然じゃありませんか?」
     「何が?」
     「他人の振りをすることです。私は振られているんですよ。あの人に好かれなかった人間なんです。だったら、せめて私ができる喬志さんへの精一杯の真心は、私みたいな最低な女にあの人が好かれるはずがない、まったく無縁な女なんだと回りに思わせることじゃないですか」
     「……なんで、そうなるの?」
     「当然でしょう。あの人が、私みたいな最低な女に好かれるような、落ちぶれた人間だと思われないためです。誰でもそうするものじゃないですか」
     「あなたって、いつも恋愛のときはそうしてきたの? それとも、恋人同士が別れるとあまりにも素っ気無くなってしまうのを見て、そう解釈してた? 恋愛ってそんなものじゃないよ。一度振られたからって、それっきりっていうのは、相手のことをそれほど思ってなかたってことよ。それなのに、あなたみたいな態度取ってたら、もしかしたら成就できていたかもしれない恋も、そのまま消えてなくなってしまう」
     そんなものなんだろうか? 私には理解するのが難しい。

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  • from: エリスさん

    2009年03月17日 18時44分58秒

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    家庭菜園サークルでアップした写真


     というわけで、雪割草が咲きました。

     これが咲いたら雪割草くんに「いいこと」が起きるかな? と願掛けしてたんですが……

     盛大に咲いたこと(^^)v

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  • from: エリスさん

    2009年03月13日 14時32分23秒

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    「箱庭・60」


     年の瀬はこんな風に過ぎていき、私は郁子の誘いどおり新年――一九九八年を北上・高木家で迎えた。
     四日までいるように勧められたのだが、そんなわけにもいかない。一緒に連れて行った飛蝶は、郁子の猫・茶々(三毛猫)とご主人の犬・利衣夜(りいや。ハスキー犬)の仲睦まじさに当てられて、一緒に遊んでもらえないし(犬と猫で仲がいいなんて……)、私は私で予定がある。
     近所ということもあって、私たちは二日の朝に我が家へ帰ってきた。
     一月二日――その日はあの人の誕生日だった。
     それを知ってからというもの、私はひっそりと彼のためのお祝いをするようになっていた。とは言っても、実家で正月からケーキなど作ろうものなら、また母が何を言うか分からないから、姉のアパートへ行って作らせてもらっていた。
     姉は一言も理由を聞かないが、おそらく察してくれているのだろう。
     「おせち料理ばっかりじゃ飽きるものね」
     と言って、手伝いもしてくれた。
     けれど、今年はそんな気兼ねはいらない。私は思う存分腕を振るうことにした。
     飛蝶が時折盗み食いや邪魔をしそうになるのを、なんとか回避しながら、お昼近くになってようやくデコレーションケーキが出来上がった。我ながらの自信作。
     「飛蝶、夜になったら食べようね。いい? さっきみたいに台無しにしちゃ駄目よ(一作目に顔を突っ込まれてしまった)」
     私の言葉が分かっているのかいないのか、飛蝶は元気いっぱいに返事をした。
     呼び鈴が鳴ったのは、そんな時だった。
     飛蝶を信じて、その場から目を離し、台所にあるインターホンに出る。
     「ハイ、どなたでしょう」
     「……」
     何の返答もないところを見ると、子供の悪戯かしら? そう思って、インターホンを元に戻す。
     でも……こうゆうパターンって、過去に幾度かあったけど……。
     私は念のために居間からガラス越しに外を覗いてみた。すると、門の前に確かに人が立っている。藍色のスーツに紺のハーフコートを羽織った女性――それは……。
     彼女は、私の視線に気づいたのか、こっちを向いて、びっくりした表情を見せた。そして、自分で門を開いて、駆けてくる。
     私もガラス戸を開いて、庭へ降りた。
     「紅藤さん! 大丈夫なの!?」
     と、彼女――来目杏子は言って、私の手を取った。「以前より面やつれしてるじゃない!」

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  • from: エリスさん

    2009年03月05日 16時37分44秒

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    「Re:m(__)m おかげさまで復調しました。」
    > 昨夜から具合が悪いです。
    > 起き上がるのも辛いので、
    > 今日は休載するかもしれません。


     と、書いてから音沙汰がなかった、この一週間。
     本当に申し訳ございませんでした。
     ようやく昨日から体調が戻りまして、今日こうして更新しています。
     いったい何がおきたのかと言いますと、


     先週の木曜日の夜に「確定申告」を書いている最中に胃痛を覚えまして、
     数時間後に、せっかく食べた夕飯をすべて吐き出してしまうという………。
     「なんてもったいない!」って誰かに言われそうですが、本当に胃が痛かったのだから仕方ない。

     OLを辞めてから書くようになった「確定申告」は、私にとってはかなりの苦痛なんですよ。もう、嫌なことばかり思い出すんで。

     税務署の人から、
     「書き方が違う」
     「提出する証明書が間違っている」
     「保険が満期で戻って来た時は、それまでいくら支払ってきたのか算出してください」
     等々、初めて確定申告を書いたときにさんざん言われまして、あれ以来苦手になってしまったんですね。


     そんなわけで胃が痛いまま眠って、翌朝、せめて牛乳だけでも飲まないと、今日はネット小説の更新日なのに体力がもたない……と頑張ったところ、またしても同じ結果に。
     それで、「m(__)m」の書き込みをしてから、また寝込む羽目に。
     翌日の土曜日は、それでもなんとか仕事に行けるぐらいになったんですが、
     そのまた翌日の日曜日に、胃薬の後遺症で腸の中で「ある物」が固まり、その重さで腰痛に。
     映画館は毎月一日が「ファーストデイ」ということでかなり繁盛する日だと言うのに、その忙しい最中に早退するという傍若無人をやってのけてしまいました……だって本当に痛かったんですもの、倒れちゃいそうなぐらい。
     その翌日(月曜日)は、他の人に仕事を代わってもらい、
     そのまた次の日(火曜日)は腰にサロンパスをヒラメ張りして出勤。
     そして昨日、ようやく回復して、全力で仕事してきました。


     今日は仕事がお休みなので、いつもなら家でゆっくりしている日なんですけど、先週のこともありますので、今週は今日と明日の二日にかけて更新することにきめました。
     今日はこちら「恋愛小説発表会・改訂版」を更新しましたが、明日は「神話読書会〜女神さまがみてる〜」を重点的に更新します。
     本当に読者の皆様には、楽しみにしてくださっているにも関わらず、勝手に休載してしまってすみませんでした。
     これからも変わらぬご愛顧をよろしくお願いします。

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  • from: エリスさん

    2009年03月05日 16時14分37秒

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    「箱庭・59」
     「あなたも聞かされてると思うけど、片桐家には古い伝承があるの」
     近江守護職・佐々木家から分かれた桐部家、そこからまた分かれて越後に移り住んだのが片桐家なのだが、その片桐家には始祖からの伝承があった。
     「その時が来るまで血筋を決して絶やすことなく、日本国中に広げなければならない。“御子”はその内より生まれる」
     この「御子」というのがどういう意味なのか分からないのだけど、とても重要なことだけは分かる。その為、私の祖母も郁子の祖母も、東京と千葉に上京して、家政婦として働いていたのだ。郁子の祖母・世津子はその奉公していた北上家の次男と相思相愛になって、戦後の混乱期を共に戦い抜き、結婚に至ったのである。
     このように、片桐家の子女は跡取りを除いて成人すると皆、各地に自分の居場所を求めて散らばるのが慣習になっている。喬志の母親もその一人だったとは……。
     「私ね、その伝承にある御子って、エミリー先生のことじゃないかって思ってたの」
     と郁子が言うので、嵐賀エミリーですか? と私は聞きなおした。
     「ええ。私たちの大伯父様――道昭和尚(どうしょうおしょう)もね、片桐の嬢(じょう。エミリーのこと)は現代に蘇った斎姫(いつきひめ。一族を守る巫女)だって言ってたもの。それぐらい霊力が強いの。でも、エミリー先生はそれをあっけなく否定なさるのよ。〈いいえ、私ではないわ。私はその御子を育てるために遣わされた者よ〉って」
     「でも、エミリー先生は独身……」
     「そう、独身主義者。だから、育てるって意味が違うみたいね。子供を育てる、というのとは」
     私のような凡人には理解できないぐらい、奥が深いわ。
     「さてと……もう、崇原さんが舞い戻ってくることはないわね」
     郁子は私が食べ終わった物を片付けて、すぐに戻って来るわ、と階下へ降りていった。そして、濡れたタオルを手にして戻って来た。
     「これで胸元を拭いて、ヒーリングやってあげるから」
     「あ、すみません……」
     「いいのよ。それにしても、風邪薬も飲まずによく頑張ったわね」
     「大丈夫だろうとは思うんですけど、妊娠中に薬物って口にしない方がいいんじゃないかと……」
     「いい心掛けだわ」
     言われるとおり胸元を拭き、横になった。
     郁子のヒーリングは、口から気を吹き込む方法を取る。つまり、私の胸元に彼女の唇があたるのだ。過去に何度かやってもらっているが、なんと表現すればいいのだろうか、恥ずかしいという気持ちより、気持ちが空白になってしまうような感覚に陥ってしまう。でも効果は抜群で、すっかり治ってしまうのだ。
     だがその分、郁子が具合を悪くしてしまうことがある。
     ヒーリングを終えた直後、彼女は一回くしゃみをした。
     「アヤさん、大丈夫?」
     「うん……あなた、こんなに頭がボーッとしてたの? よく会話できたわね」
     「具合が悪いのには慣れてますから」
     「そう……私はいつも健康だからなァ」
     彼女はフラッとした足取りで立ち上がった。
     「それじゃね。年末には家に来てね。祖母が待ってるから。飛蝶ちゃんもね」
     「アヤさん、本当に大丈夫なの? 少し休んでいかれた方が……」
     「大丈夫よ。私、風邪は三日で治す人間だから。……見送りはいいわ。あなたはもう少し寝てなさい」
     しかし、やっぱり私は寝床から出なくてはならなくなった。
     “ダダダダッダダッ”
     「キャア! アヤさァーん!」
     階段を滑り落ちた彼女は、私が見に行くと、廊下に倒れたまま携帯電話でご主人・高木祥(たかぎ しょう)と話していた。
     「お願い、ショオ。迎えにきて……」
     「見舞いに行っといて、何をやってるんだい? アヤ……」
     と言っているご主人の声が聞こえたような気がした。



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