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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜>掲示板

公開 メンバー数:6人

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  • from: エリスさん

    2012年10月25日 23時30分17秒

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    m(_ _)m

    すみません、明日はお休みします。
     その代り「神話読書会」は頑張って更新してあるので、そちらをお楽しみください。

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  • from: エリスさん

    2012年10月23日 20時39分24秒

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    サークル名変更しました!

    今までは変更できなかったので、我慢していたのですが、今度からはできるようになったので、「改訂版」を外して「時にはノンジャンルで」を付けてみました。

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  • from: エリスさん

    2012年10月19日 11時45分51秒

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    「夢のまたユメ・69」
     シネマ・ファンタジアが入っているショッピングセンターSARIOの中は、節電のために電灯の殆どを消され、また従業員もまばら、当然お客もいないので、鬱蒼としていた。
     それでもファンタジアの事務室に入ると、懐かしい顔ぶれが集まっていた。
     「宝生さん! 久しぶりィ〜!」
     「あっ、リリィだァ」
     「沢口さん! かよさん! お久しぶりですゥ!」
     かよさんのような主任さんか、主婦の従業員が集められていた。百合香は本来なら独身なので「主婦」とは言い難いが、宝生家は母親が死去して百合香が「主婦代わり」をしていることを上司も知っているので呼ばれたのだろう。
     いつもはスーツ姿の支配人も、今日はジャージ姿で、デスクに防災用のヘルメットを置いていた。他のマネージャーたちも動きやすい服装をしている。今か非常事態と言う意識の表れだろう。
     「ええ、では皆さん」と、支配人が咳ばらいをした。「誠に申し訳ありませんが、土曜日からの営業再開のために、協力をお願いします。ここにあるブランケットを洗濯してきてもらいたいのです。あと、3Dメガネ用の眼鏡拭きもあります」
     支配人のデスクの横に、プラスチックボックスの中に山と積まれたブランケットと、眼鏡拭きがあった。
     「ブランケットって……何枚あるんですか?」
     と、チケットスタッフの一人が聞くと、
     「ブランケットは約200枚、眼鏡拭きは20枚あります」と、大原マネージャーが答えた。「まあ、眼鏡拭きは全部洗わなくてもいいと思います。初日に10枚もあれば……」
     「あっ、じゃあそれは、私たちフロアスタッフが手分けして」
     と、かよさんが答えると、百合香も沢口さんも、うんうんっと頷いた。
     「でも、ブランケットは……今ここに集められているのは10人ですから、一人あたり20枚とか、たった二日では……家族の洗濯物も洗ってるんですよ、私たち」
     「もちろん私たちマネージャーも持って帰ります」と、大原は言った。「必ず20枚持って帰ってくれ、なんて頼まないわよ。それぞれ、この枚数なら洗って来られる――という枚数だけお願いします」
     「当然、お客様が使用する物だから、柔軟剤とか使った方がいいですよね?」
     「無理にとはいいませんが、それが好ましいです」
     「そんな……これから電気代だって高くなるかもしれないのに……」
     何人かのスタッフから苦情が出始めたので、百合香はフォローを入れてみた。
     「そんな、ただでやってくれ、なんて頼みませんよね? 支配人」
     「もちろんです。お礼はちゃんと用意しています。野中君!」
     「はい、支配人」
     と、野中マネージャーが茶封筒を取り出して、中身を出して見せた。
     「本社から、皆さんにお礼の品が届いてます!」
     それは、3D作品にも使える劇場招待券だった。
     「3Dもいいんですか! 普通の招待券は3D使えないのに!」
     百合香が食いついてみせたので、かよさんも乗ってきた。
     「太っ腹じゃないですか、本社! つまり金額に直すなら、2,100円もお得ってことですね」
     「というわけで、皆さん、協力してくれませんかね?」
     野中マネージャーが押しの一言を言ったところで、しばらくの沈黙が続いた。
     すると、支配人が突然立ち上がって、皆に頭を下げた。
     「無理なお願いをしていることは分かっています。それでも、土曜日から無事に営業を再開させるためには、皆さんの協力が必要なんです。ですから、どうかお願いします」
     「頭を上げてください、支配人」と、かよさんが言った。「私たちフロアは協力します。なんなら、ここに居ないスタッフに声を掛けても構いません」
     「そうですよ」と、沢口さんも言った。「主婦じゃなくても、一人暮らしで、自分で洗濯してる人だっているんですし。そうゆう人になら頼めると思います」
     「ありがとう……」
     フロアスタッフが協力的なのを見て、売店スタッフが口を開いた。
     「あなたたちにばっかり、いい格好させられないじゃない……でも、20枚は無理です。10枚ぐらいなら……」
     「私も、それぐらいなら……」
     そういうわけで、それぞれ持って帰れるだけの枚数を受け取ることにした。
     百合香は25枚受け取った。
     「そんなに洗えるの?」
     かよさんが聞くので、
     「夜に洗濯して、夜風で乾かせば余裕です」
     「あっ、なるほど……その手で行けば、私ももう少し持っていけます」
     「助かる(^o^)」と、大原は言った。「これで、私たちマネージャーが残りを持って帰れば、全部洗濯できるわ」
     「ところで土曜日からって、他の店舗も営業再開するんですか?」
     と、百合香が聞くと、
     「ええ、全部。営業時間は短くなるけど」
     「良かった。そろそろペットショップで買い物したかったんですよね」
     「ああ、猫ちゃんのご飯ね」
     「はい。ホームセンターで売っているのでも食べてくれるんですけど、やっぱりいつものじゃないと満足できないみたいで」
     すると、かよさんが言った。「リリィはキィちゃんに贅沢させすぎなんだよ」
     「だってェ〜一人娘なのよォ〜」
     「そうゆうのは、実際に自分で子供産んでから言いなさい。ねぇ? 沢口さん」
     「ええ? でもそれって……」と、沢口さんは言った。「近いうちに来るんじゃない?」
     百合香はちょっとギクッとしたが、支配人が話し出してくれたおかげで、みんなにそれを気付かれることはなかった。
     「そういえば、うちの娘も似たようなことを言っていたよ」
     「支配人の娘さんって、去年お嫁に行った?」
     と、野中が聞くと、支配人は答えた。
     「今、こっちに帰って来てるんだよ、子供と一緒に。実家の方が融通が利くと思って帰って来たのに、こっちの方も店が軒並み閉まっているから、おむつが手に入らないって」
     「ああ、大変ですね」
    と、野中が言うと、大原がポンッと手を叩いてから言った。
     「じゃあ、土曜日からSARIOの乳幼児専門店が開いてくれるから、娘さんも助かりますね」
     「そうなんだ。まあ、品数は十分じゃないかもしれないがね」
     支配人の娘さんは二か月前に出産したばかりなのだが、お産の際に実家に戻ってきて、翌月には旦那さんのもとに帰ったと聞いていたのに、またこの震災で実家に戻って来たのだろうか?――と思った百合香は、こう聞いた。
     「娘さんとお孫さんだけ……ということは、旦那さんは?」
     「確か宮城県に派遣されたと聞いたが……」
     「宮城……ですか?」
     もろに震災の被害を受けている地域である。まさか、仕事で宮城に行っている間に被災したのか? と、心配していると、野中が代わりに答えた。
     「支配人の娘さんのご主人は、レスキュー隊の隊員なんだよ」
     「あ、ああ!!」
     当然のことながら、地元のレスキュー隊だけでは人手が足りないので、東京からだけでなく、各地から隊員が集められているのである。
     「凄いですね。立派なお仕事です」
     「ありがとう。わたしも身内の者がみんなの役に立ってくれているのが嬉しいんだよ。だからこそ、わたしも負けてはいられない……まだ、近隣の映画館はどこも休業している。正直、こんな非常時に映画なんか上映してなんになるんだと、そういう意見も出て来ると思う。だがね、こんな時だからこそ、人々は心の安らぎを求めているはずなんだ。その安らぎに、映画は役に立つと思わないかね?」
     「思います」
     「うん。だから、わたしはファンタジアを再開させることにしたんだよ。どんな非難を受けようともね」
     やっぱりうちの支配人は凄い人だな……と、百合香は改めて思った。
     家に帰ってから、百合香はパソコンを開いて、宮城県でのレスキュー隊の記事が載っていないかネット検索してみた。すると、直接的な記事はないが、宮城県で救助された人たちの記事がいくつか出てきて、その救助された時の写真を見ることができた。その中に支配人の娘婿がいるかどうかは分からなかったが……百合香は、ある一つの記事で、マウスを動かす指を止めた。
     《津波に遭いながらも、樹に助けられた!》
     この見出しで書かれていた記事は、要約すると――袖なしのダウンジャケットを着ていた男性が、津波に流されながらも、そのジャケットの袖口に樹の枝が通り、そのまま樹につるされて助かることが出来た。その際、小学校2年生になる男児が男性の傍に流されてきたので、男性は必死にその男児を受け止めて、一緒に樹につるされたまま救助が来るのを待った。――というものだった。
     袖なしのジャケット――それも丈夫なダウンジャケットでなければ、偶然に袖口に樹の枝が通っても、服が破れるかして、また津波に流されてしまったことだろう。加えて、その男性が小柄でなければ、樹の枝の方が折れて、助からなかったはずである。しかも途中で流されてきた男の子をキャッチして、津波が通り過ぎるまで待っていたとは……余程の幸運がなければ無理だっただろう。
     そんな奇妙な記事の横に、その男性と男児が救助された後の写真が載っていた。百合香は、その男性の顔に釘付けになっていた。
     『……間違いない。これ、伊達さん……』
     我に返った百合香は、居ても経ってもいられず、携帯電話を開いた。
     電話帳から、ある人へ電話をかける……相手は、5回コール目で出てくれた。
     「もしもし?」
     と、相手が言ったので、百合香はすぐに言った。
     「佐緒理さんですか? 私、宝生です!」
     「え!? あっ、百合香!? へえ、あんたもとうとう携帯買ったの?」
     まだOL時代は携帯を持っていなかったので、そんな言葉が返ってくる――相手は、朝日奈印刷でお世話になった小林佐緒理(こばやし さおり)だった。
     「今、大丈夫ですか?」
     「うん。仕事はちょうど終わったところだからね。今、更衣室にいるんだけど……」
     本来なら会社業務が終わる時間ではない。朝日奈印刷も節電のために退勤時間を早められているのだろう。
     「でも、どうしたの? 急に。会社辞めてからは、こっちの人とは誰とも連絡取ってなかったでしょ? ……あっ、もしかして、結婚の日取り決まった?」
     以前、翔太の姉・紗智子が百合香の過去を調べるために、佐緒理から話を聞いたことがあった。だから、てっきりそれに関する話だと思ったのだろう。
     「いいえ、それはまたいずれ……それより、伊達さんのことなんですけど」
     「伊達君?」
     伊達成幸(だて しげゆき)――百合香が朝日奈印刷時代に恋をした男の事である。
     「確か今、宮城の実家に帰ってるんですよね……」
     「ああ……そうゆうことね。うん、向こうで被災したらしいね。でも、無事だよ。ニュースに出てたから」
     佐緒理も百合香が見た記事と同様の物を見たらしい。
     「伊達さんと連絡は取れますか?」
     「それが取れないんだよ。あいつの携帯、つながらなくなってて。実家の電話も……どうゆうことになってるのか、簡単に想像つくけどね」
     「そう……ですよね」
     本人が津波の被害に遭っているのである。携帯電話はきっとその途中で落としたか、流されたか。自宅の電話――以前に、実家自体がどうなっているか分からない。
     「でもまあ、本人は生きていることは間違いないんだから、そのうち連絡してくるでしょう」
     「じゃあ、もし佐緒理さんの方に連絡が行ったら、私にも教えてください」
     「分かった、教えるよ」
     百合香は電話を切ってから、やりきれない気持ちになった。
     『私、伊達さんの方にまで気を配れなかった……宮城に帰ってるって、聞いていたのに……』
     自分が恵まれすぎて、辛い目に会っている人たちのことを思いやることができなかった。自分はなんて狭量なんだろう……と、百合香は自分を責めた。
     人にはそれぞれ限界があるものだが、そんなこと、今の百合香にはどうでもいいことのように思えていた。




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  • from: エリスさん

    2012年10月12日 12時48分50秒

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    m(_ _)m

     すみません。今日はこちらを休載します。
     書き進められませんでした。これから、ヴェポラップを喉に塗って、横になろうと思います。

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  • from: エリスさん

    2012年10月05日 12時06分00秒

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    「アキハバラ@DEEP」を知らない方のために

     まだホームページ残ってたので、リンク貼っておきます。

     http://www.akihabaradeep.com/


     自虐少女隊は、この第4話に出てきたバンドで、

     その自虐少女隊の元ネタは、「GO! GO! HEAVEN!」という、これもまた暗いイメージのドラマの中に登場するバンドです。
     こっちのホームページもまだ残っていたので、リンク貼っときます。

     http://www.tv-tokyo.co.jp/ggh/

     上のリンクを見れば分かると思いますが、「GO! GO! HEAVEN!」は岡本健一が出演していたから見ていたドラマで、「アキハバラ@DEEP」は風間俊介が主役を張っていたからこそ見ていたドラマです。その後、「アキハバラ〜」はDVD BOXも買いました。

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  • from: エリスさん

    2012年10月05日 11時54分51秒

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    「夢のまたユメ・68」
     「どうして呼び戻したんです?」
     勝幸が受話器を置くとすぐ、真珠美はそう言って夫を攻めた。
     「あまり長居させるわけにもいかないだろう。ただでさえ、ここ数日入り浸りだったのだから」
     「結婚前の恋人同士が一緒にいることに、どこか不都合がありますか?」
     「不都合は大ありだ。その結婚は破談にするのだからな。それはおまえも承知のはずだろう」
     勝幸は真珠美の方に歩み寄ると、耳元でこう言った。
     「ぐずぐずしている間に、百合香さんが妊娠でもされては困る。早くそのことを告げに行ってくれ。嫌なら、わたしが言いに行くまでだ」
     「させません……私でなくては、ならないんです」
     「だったら……」
     「状況を分かってください!」
     と、真珠美は一歩下がって、夫と距離を取った。「この地震で日本中が大変なことになっているんですよ。誰もが不安で、先の事も読めなくなっているこの状況で、百合香さんから心の支えを奪えと言うんですか!」
     「なにも翔太でなくてもいいはずだ!」
     と、勝幸も声を荒げた。「百合香さんにはご家族がいる。友人も恵まれているようだし、翔太と別れたところで、彼女を支えてくれる人はいくらでもいる。だが、わたし達は違う。翔太にはどうあっても後を継いでもらわないとならなんだ。その翔太に、百合香さんは……」
     「やめてください!!」
     相応しくない――などと、聞きたくない。百合香の人格を認めている人間として、それだけは。妻のそんな思いを察して、勝幸はため息をつくと、こう言った。
     「翔太でなければ良かったんだよ、百合香さんには……企業を背負ってる人物とか、政治に携わってるとか、芸能人とか、そうゆう目立つ世界の人物ではなく、一般家庭で育った人物とだったら、百合香さんは出生のことなど問題視されずに、幸せになれる。出会ってしまったのが翔太だったことが、彼女の不運だったんだ」
     「もう、黙ってください……」
     真珠美が今にも泣きそうな顔をするので、勝幸は仕方なく黙ってその場を立ち去った。
     『いっそ、手遅れになってくれれば……』
     と、真珠美は思った。『百合香さんが翔太の子を身籠ってくれれば……子供がいるのに見捨てろ、なんて言えなくなるはず……』
     真珠美はそんなことを考える自分も、勝幸と同じ卑劣な人間だと思い、悲しくてどうしようもなくなった。
     「百合香さん……ごめんなさいね……」


     百合香が自分の部屋に戻ると、携帯にメールが届いていた。開いて見ると、百合香が小説を連載しているコミュニティーサイトから、百合香宛てにルーシーから個人レターが届いている、というお知らせだった。
     『そうだ、ルーシーさん! すっかり忘れてた』
     身近に会える友人の無事は確認したが、ネットの友人の無事はまだ一人も確認していなかったのである。
     個人レターは2通あって、初めに届いたものは「チャットしない?」という、いつものお誘いだった。今日は病院に行くということもあって携帯を置いていってしまったから、百合香はメールが来ていることも知らずに返事をしなかった。それで2通目は、普通の手紙をくれていた。
    【  ユリアスさんへ
      地震は大丈夫でしたか?
      私の回りもゴタゴタしているので、なかなかネットの世界には戻ってこれないことは察します。でも、戻れるようになったら、ネット住民に無事であることを知らせてくださいね。待ってます。
      私は明日から仕事に復帰するんだけど、こんな状況なので、勤務時間は午後4時までになりました。だから平日でも夕方ならおしゃべりできるよ。
      それじゃね。                    ルーシー  】
     「ごめんね、ルーシーさん。心配させちゃって」
     百合香がレターを見ながら独り言を言っていると、部屋のドアを誰かが叩いた。
     「リリィさん! 俺です」
     「ナミね。入っていいわよ」
     百合香が携帯を閉じると同時に、ナミがドアを開けた。
     「それじゃ、俺も帰ります」
     「うん、ありがとね。お兄ちゃんのお手伝いしてくれて」
     「再従兄弟は助け合わなきゃ (^o^)」
     「そうね。あっ、お菓子、ちゃんと持った?」
     「もらいました、うちの家族分」
     「そう。おば様たちによろしくね」
     「はい……あれ?」
     「なァに?」
     「リリィさん、泣いたの?」
     言われて、ハッとする――まだ目が赤いのか? ちゃんと洗顔もしたのに。
     なので百合香は、炬燵に乗せていた指輪ケースを手に取って、彼に見せた。
     「嬉し泣きよ。さっき、もらったの」
     「ああ! ……良かったですね」
     「うん……ありがとう」
     ナミが帰ったのを見計らって、恭一郎が二階から降りてくる。
     「寿美礼おばさんの、診察の結果は?」
     「……妊娠一か月」
     「……そうか」
     素直に喜んであげたいのに――恭一郎も複雑な思いだった。
     「とりあえず、ちゃんと栄養を取らないとな。軽く食糧難になってるが」
     「大丈夫よ、工夫するわ」
     「金銭的なことは任せろ。俺がジャンジャン稼ぐ」
     「頼りにしてるけど……お兄ちゃんも明日から勤務時間減らされるんでしょ?」
     「節電の関係でな。でもそれも、しばらくの間だけだろう」
     「うん、そうだね」
     百合香も恭一郎も、明るく勤めようとするのだった。


     それから五日が過ぎて、木曜日。
     百合香は、時折ネットの方に書き込みはするのだが、それは小説ではなく近況報告などの、まるっきり雑談だった。
     精神的に小説を書ける環境ではなかったのだ。
     なぜか?――仕事に行けないことがストレスになっていたのである。
     ネットでルーシーと話したり、たまにユノンが遊びに来たりはしていたが、他の友人は地方に避難したり、学生だから大学に行っていたりで、そんなに会えなくなっている。翔太も会社の事が忙しくて、全然会いに来れなくなってしまった。
     気晴らしに買い物に行っても、買いたいものがお店にない。
     そんなうちに、花粉症の症状が出始めて……以前から薬には頼らない方だったが、妊娠中は特に頼ることができない。食事療法で抑えたいのに、花粉症に効果のあるヨーグルトが一切手に入らない上に、同じく効果のある紫蘇の葉も、まだ庭で栽培しているものは双葉が出た程度で食べられはしない。
     この状態で鬱になるな、という方が難しい。
     恭一郎は、百合香の炬燵を片づけてやろうと(もう無くても寒くないから)妹の部屋に行き、その妹が部屋の電気も点けずに、ぶつぶつと何か歌っている異様な光景を目にした。
     「ゆ、百合香!?」と、恭一郎は急いで部屋の電気を点けた。「なんで自虐少女隊の自虐ハニーなんか歌ってるんだ!?」
     アキハバラ@DEEPに出てきた、某ドラマのリスペクトバンドと、その曲のことだが……とにかく鬱な時には大ハマリする曲である。
     「なにもする気が起きない……」
     「だったら、映画でも見に行け! 今なら“塔の上の……”……しまったァ! 映画館自体がどこも休業中だったァァァァァ!!」
     「そうよ……このまま、うちの映画館も潰れちゃったりして……」
     「待て、その思考は危険だ! 胎教にも悪いからもっと明るいことを考えろ! そうだ、キィはこんな時なにしてるんだ?」
     姫蝶は、百合香の様子があまりにも怖いので、自分の部屋で丸くなっていた。
     「キィ、お姉ちゃんを元気づけてあげなきゃダメだろう!」
     「にゃあ〜……」
     「なんだ? 手におえないって言いたいのか?」
     「にゃお」
     「そりゃそうかもしれないが……」
     その時だった――百合香の携帯が鳴った。
     その曲を聞いて、百合香は瞬時で飛びついた。
     『今のって、マクロスの曲だよな?』
     恭一郎はアニオタなのでそう思ったが、正確にはTM. Revolutionの曲である。
     「ハイ! 宝生です!……お疲れ様です、野中さん! ハイ……ハイ……ハイ! 分かりました! はい?……ええ、いいですよ。それじゃ、これから伺います」
     百合香は先刻とは一変して、やる気満々の表情で通話を切った。そして、万歳をしながら、恭一郎に言った。
     「お兄ちゃん、ファンタジアが土曜日から営業再開するって!」
     「オウ! 良かったな」と、恭一郎も安心した。「え? でも、これから伺いますって言ってなかったか?」
     「うん、あのね。出入りのクリーニング屋さんがずっとお休みしてるから、お客さんに貸し出すブランケットが洗濯できずに溜まってるんだって。だから今から、女性スタッフが何人か呼ばれて、家で洗濯できないか相談するんだって」
     「そうか。じゃあ、行って来い」
     「うん、行ってくる!……えっと、着替えたいんだけど」
     「ああ、悪い悪い」
     恭一郎は照れ笑いをしながらドアを閉めた。



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