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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

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  • from: エリスさん

    2009年12月31日 18時26分57秒

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    毎年恒例「いい初夢を見る方法」

     毎年書いておりますが、今年も書いときますね。皆さん、一年前の書き込みをさがすの大変でしょ?
     ちなみにこの方法は、「マリアさまがみてる」で今野緒雪先生が紹介しているものです。

     まず、千代紙の裏にこう書きます。

     長き夜の
     遠の眠りの
     皆 寝覚め
     波乗り船の
     音の良きかな

     これを帆掛け船の形に折ります(折り紙のうまい人に教わろう)。そして元旦の夜に枕のした置いて、寝るだけ。


     この歌は上から読んでも下から読んでも、同じ文章になる回文になってます。
     (ながきよの とおのねぶりの みなめざめ なみのりふねの おとのよきかな)

     今回も皆さん、やってみてくださいね。

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  • from: エリスさん

    2009年12月25日 14時50分01秒

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    年内はこれで終了です

     年内の小説アップはこれで終了したいと思います。
     来年はいつからになるかなァ........まだ一月二日からの予定表ができあがっていないんですよ、うちの映画館。
     でも多分、第二週の金曜日あたりには更新再開したいと思います。

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  • from: エリスさん

    2009年12月25日 14時48分02秒

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    「阿修羅王さま御用心・11」
     長い時間、息ができなかった沙耶は発作を起こしかけた。そんな彼女をきつく抱きしめながら、千鶴は言った。
     「沙耶は私のですから……汚したら許しません」
     やや呆気に取られていた郁子だったが、その台詞を聞いて微笑み、
     「承知したわ。安心して」と答えた。
     「それじゃ、適当な時間がきたら迎えに行くから」
     そう言って、千鶴は校舎の中へと入って行った。あとに残された沙耶は、まだ頬が紅潮している。
     郁子は彼女の背中を軽く押して、歩くように促してあげた。
     「素敵な人ね、南条千鶴さん……だったかしら?」
     「ハイ……」
     「恋人?」
     その問いに、沙耶はコクンと首を縦に振った。
     「そう……恥ずかしがることないわ。芸術学院では当たり前のことよ」
     「あの……高校の時からの……なんです」
     「なおさら素敵じゃない。同性の恋人とそんなに長く続けられるなんて、滅多にないことよ。よほど強い絆があるのね……縁、かしら」
     「……あると、思いますか?」
     「ん?」
     「縁……あると、思います?」
     「あると思うわよ。恋愛って、どんな人とでも、どんな時でも、縁があるから出会うものだと思うわ」
     「恋で終わらせたくないんです。私……結婚、したいんです」
     郁子は思わず足を止めていた。沙耶も立ち止まって、郁子を見つめていた。
     「結婚したいんです、千鶴と。いけない、ことでしょうか?」
     「……彼女は? どう思ってるの?」
     「……怖くて、聞けません……」
     「拒絶されるかもしれないから? それはないと思うわ。彼女、あんなに真剣にあなたのことを想ってるもの」
     「そう……なんですけど。でも、禁忌、ですから……」
     「禁忌でも、結婚したいのでしょう?」
     すると、真剣な眼差しで彼女は答えた。「ハイ、絶対に」
     「だったら、あなたの選択は間違っていないわ。男だとか女だとか、そんなことは考えに入れなくていいのよ。同じ人間なんですもの」
     郁子はそう言って、また歩き出した、
     『でも驚いた。流されやすいタイプの子かと思ってたら、強い意志も、激しい情熱も持ってるんだわ』
     と、感心しながら。

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  • from: エリスさん

    2009年12月25日 13時53分58秒

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    「阿修羅王さま御用心・10」
     建(たける)からの通信が入ったのは、そんなときだった。
     「アロアロー、タケルだよォ〜ん」
     「あら、タケル。どうかして?」
     「今ね、紅藤ちゃんが訪ねて来たんだよ」
     「沙耶さんが?」
     「たぶん、このまま帰ると思うから、今から行けばアーチのところで会えるんじゃないかと思ってさ。会ってあげる?」
     「もちろん! すぐに着替えるわ」
     「着替えるって???」
     建がまだ喋っているのも構わずに、郁子はトランシーバーを智恵に押し付けて、裳を外し、五衣(いつつぎぬ)から一気に衣装を脱いだ。
     「ちょっと、アヤ。乱暴に扱わないでよ」
     「時間ないのよ。私の服は?」
     「そこの椅子の上」
     歩きながら袴と単(ひとえ。十二単で言う下着)を脱ぐ。衣裳の試着はしていても、例の暗器はちゃっかり両足の腿に装着されていた。その上からギャザースカートを履き、セーターを着る。髪は編んでいる余裕がないからそのままにし、コートを掴んで走り出した郁子は、そのまま部屋を出て行った。
     後に残った智恵は、建に言った。
     「誰か、片付けに寄越してくれない?」


     講堂の下にある、アーチ型の入り口を二人が通り過ぎようとした時だった。
     「沙耶さん!」
     講堂からの階段を急いで駆け降りてきた郁子が、息を切りながら呼び止める。
     「良かったァ! 間に合ったわ……」
     「アヤさん!? どうして……」
     「タケルに連絡をもらったの。ごめんなさい、わざわざ訪ねてくれたのに」
     「いいえ、そんな……」
     沙耶はハニカミながらも言った。「良かった、アヤさんに会えて。このごろ休み時間でも見当たらないから、どうしたんだろうって心配だったんです。……大変なんでしょうけど、お元気そうですね」
     郁子は、健気な子だなァと思い、微笑んだ。
     「ねえ、少しお話しましょうか」
     と郁子が言うと、喜びながらも躊躇する瞳で沙耶は見つめてきた。
     「いいんですか? 草薙さんの話では……」
     「あなた一人ぐらい守れるわよ。どう? 坂の途中の公園で」
     「ハイ、喜んで」
     すると、それまで無視同様だった千鶴が口を出した。
     「ちょっと! 一人ぐらいってことは、私は席をはずせってこと?」
     「ごめんなさい。二人だけで話がしたいの……私たち、親戚なのにお互いをあまり知らないんですもの」
     郁子の言葉に、沙耶も言った。
     「千鶴、お願い、少しだけ時間をちょうだい。どこかで待っていて。ね?」
     冗談じゃない……と、千鶴は思っていた。親戚だということで、沙耶はまったく郁子を警戒していない(当然というべきか)。北上郁子といえば、佐保山郁と並んで、この学院の二大勢力。ファンクラブの女子生徒は、彼女たちとせめて一夜を共にできればと恋い焦がれていると聞く。中には本当にホテルへ誘われたとか噂され(大きな誤解だが)、沙耶のように清楚で可愛い少女なら、もしかしなくても手をつけられてしまうかもしれない。
     しかし、沙耶のひたむきな瞳で頼まれてしまうと、千鶴は嫌とは言えないのだった。
     そうして、千鶴が取った行動は――郁子の前で沙耶にディープキスをしたのだった。

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  • from: エリスさん

    2009年12月17日 17時31分44秒

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    休載予告

     作者多忙により、明日の更新はお休みいたします。

     もう一つの「神話読書会〜女神さまがみてる〜」は今日更新してますので、よろしかったらそちらでお楽しみください。<(_ _)>

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  • from: エリスさん

    2009年12月11日 14時01分27秒

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    「阿修羅王さま御用心・9」
     そこで、「あっ、もしかして!」と、洋子が立ち上がった。
     「おばあ様が作ったものですか? 郁子先輩の家へ泊まりに行った時、先輩のおばあ様が言ってたわ。〈私の姉が作る梅干しは、とても美味しかったのよ〉って」
     「ええ、そうなんです。少し前に二人が電話で話した時に、その話題になったらしくて。それで……」
     「良かったら」と、洋子もドアの方へ出てきた。「それ、私が預かるわ。私、今井洋子(いまい ひろこ)って言うの。郁子先輩とは高校の時からの先輩と後輩なんだ」
     「そうだな、その方がいいよ」と建も言った。「そのうち姉ちゃんから聞くだろうけど、姉ちゃんが休み時間に姿を眩(くら)ましているのは、一般生徒を巻き込んで怪我を負わせないためなんだ。エライ危険な目にあってるんだよ。だから、紅藤ちゃんともしばらくは会えないと思うんだ」
     「そうなの……」
     「ごめんな……会いたいよな、姉ちゃんに」
     「草薙さんが謝る必要はないわ。それじゃ……お願いします」
     沙耶は風呂敷包みを洋子に渡した。
     「確かに預かりました」
     「それと、今度来た時は、ここ押して」
     と、建はドアの横の壁にある猫型のインターホンを指差した。「この肉球が呼び鈴のボタンで、口が通話口になってるんだ」
     「これ、インターホンだったの?」
     沙耶が目をむくのも無理はない。
     「前は普通のインターホンだったんだけどさァ、四月からサロンの責任者がカールの姉御――佐保山郁さんね、彼女がやることになったから、それで、彼女の趣味で付け替えたんだよ」
     すると千鶴が一言いった。「幼稚趣味」
     「千鶴!」
     「いいよ、紅藤ちゃん……これからも、ちょくちょくおいでよ。遠慮することも、怖がることもないから。紅藤ちゃんはアヤ姉ちゃんの再従姉妹なんだからさ」
     「ありがとう……それじゃ、アヤさんによろしく」
     沙耶と千鶴が行ってしまうと、なんか可哀そうだなァ、と建は思った。確かに、この時期は校内でアヤに会わない方が身のためとは言え、二人はつい最近まで自分たちが親戚であることを知らなかったのだ。
     沙耶もまた、片桐の血筋……。
     『彼女を見てると、守ってやりたくなるのは、代々片桐家の御庭番だった草薙家の宿命かな』
     建はポケットから小型のトランシーバーを出すと(この頃はまだ携帯電話もPHSも普及していなかった)、スイッチを押した。
     「アロアロー、タケルだよォ〜ん」


     相沢唄子の刺客から逃れるために、郁子は一般の生徒に知られていない場所――講堂の舞台裏の楽屋で、流田智恵(ながれだ ちえ。服飾デザイン科二年、「永遠の風」の衣装担当)と潜んでいた。
     潜んでいると言っても、それなりに仕事はしている。智恵は郁子に今回の舞台に使えそうな衣裳を試着させて、髪を梳いてあげていた。
     「さすがにアヤの髪は長くて綺麗だねェ……」
     郁子の髪は、当人の腰をすっぽり隠せるだけ伸びている。しかも、普段は一本の三つ編みにしているせいか、ほどくとウェーブが掛かってしまう。ストレートヘアだったなら、実際はもっと長いのかもしれない。
     「永遠の風」のメンバーは、何故か長髪が多い。中でも一番長いのが郁子で、二番目が建のウエストラインまで、三番目が郁の肩甲骨が隠れる程度、である。智恵も充分肩を過ぎた長さだった。
     「でもやっぱり、時代劇で髪がウェーブって言うのは変だよね。当日はストレートパーマかけてね」
     智恵の言葉に、郁子は言った。
     「あんまりパーマって好きじゃないんだけど……直前に髪を濡らして、乾かしながら癖を取るっていうのはどう?」
     「乾かす時間があるかなァ……カールさんと話し合っとこうね」
     「それよりチャーリー(智恵の愛称)。なんで十二単なの?」
     智恵が郁子に着せた衣装は、藤襲(ふじがさね)の五衣(いつつぎぬ)、藍色(あいいろ)の唐衣(からぎぬ)に、緋色の袴、それと白い裳(も)だった。
     「私たちがやるのは、戦国時代ちょっと前の、室町後期よ」
     「だって、アヤって十二単似合うんだもん。何年か前に源氏物語の若菜を舞台化した時の、紫の上の衣装らしいよ」
     「単に遊んでただけね? あなた」
     確かに、郁子の平安時代(とまでは行かないまでも)さながらの黒髪を見ていれば、十二単どころか、飛鳥時代の背子裳(からぎぬも)だって着せたくなる。また、それを着こなせてしまうだけの雰囲気を醸し出せる人物なのだから、大したものである。

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  • from: エリスさん

    2009年12月04日 16時02分27秒

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    「阿修羅王さま御用心・8」
    >  すると、先輩の一人が言った。
    >  「ホントに羨ましいね、あんなに可愛い彼女がいて」


     「駄目ですよ、先輩。あの子は私のですから」
     「別に手は出さないわよ。もう三年も付き合ってるんでしょ? 横取りしようって方が馬鹿よ」
     そこへ、他の生徒も口を出した。
     「でも、私だったらやっぱり年上のお姉様がいいなァ……ああ、佐保山様。あなたにはどうして婚約者がいらっしゃるんですか」
     こうゆう時、芝居がかってしまうのが演劇人の悲しい性である。
     「私は北上様よ。あの上品な身のこなし、美しいお声、ぬばたまの黒髪……ああ、あの方になら、たった一夜の慰み者になってもいい!」
     「あら! やっぱり人間は中性の美を追求いなきゃ。あの性格は男らしいのに、なぜか女性らしい肉体美を誇る草薙くん……思い出しただけで、クラッ、と来ちゃう」
     そうなってくると、黙っていられないのがノーマルな女生徒たちである。
     「あんた達ね、この学校にはもっと格好いい男子がいっぱいいるのに、どうして女しか見ないのよ。ピアノコースの梶浦さんとか、文芸創作科の黒田君とか、茶川さんも結構いいよ」
     「ええ? 男なんて、皮膚とか硬いし、筋肉質だし、すね毛生えてるし、気持ち悪いよねェ?」
     「あのね……だから男なんだよ、それってば」
     この学院では、なぜか同性愛が繁栄しているんである――芸術家にはありがちな傾向なんだろうか?



     「ええ! アヤさん、いないのォ!?」
     宗像瑞穂は愕然としてしまった。キツイ稽古の後、また更なる稽古を「永遠の風」ですることになっても、やる気を起こさせてくれるのは、ひとえに郁子が作ってくれるデザートがあったればこそなのに。
     「確かにねェ、この後の稽古を考えれば、今のうちに何かお腹に入れたいわね。特に演劇科の稽古で疲れきっているミズホにすれば」
     頬杖をしながら言う水島有佐の意見に、一同うなずく。
     「私、何か買ってきましょうか?」
     広末桜子が言うと、有佐は、
     「う〜ん……そうね。でも、クッキーとかポテチはだめよ。喉が乾燥しちゃうから。ツルンッとしたもの買っといで。キエちゃん(三橋紀恵)も一緒に行ってあげて。あ、あと! 領収書貰ってきて。あとで梶浦君に請求してやるから――もとはと言えば彼が悪いんだから」
     「分りました。ツルンッとしたものがいいんですよね」
     「そうそう、ツルンッとしたもの」
     桜子と紀恵が部屋を出ようとドアを開けた時だった。
     外側からも、誰かがドアを開けようとしていた――紅藤沙耶と南条千鶴だった。
     「あら、紅藤さんじゃない。どうかしたの?」
     紀恵が聞くと、
     「あっ、あの……」
     と、沙耶が口ごもってしまったので、千鶴が代わりに答えた。
     「北上先輩、いらっしゃいますか?」
     「ああ、北上さんはね……」
     そういえば再従姉妹なんだっけ……と、桜子と紀恵は思った。そこへ、建(たける)が顔を出した。
     「アヤ姉ちゃん、今いないんだよ……二人は行っていいよ」
     建に促されて出掛けていく二人を見送ってから、沙耶は言った。
     「いつ頃いらっしゃるか、わかる?」
     「う〜ん、わけ合ってしばらくは、こっちの部屋に来れないんだよなァ……でも、稽古の時間になったら講堂に来るよ」
     「そう……」
     そこで、建は沙耶が持っている小さな風呂敷包みから、自分の大好物の匂いがするのに気づいた。
     「いい匂いだな。スーパーで売ってるような紛い物とは訳が違う……手作りの梅干しだろう?」
     「あっ、わかる?」
     「俺、鼻はいい方なんだ」
     「そう……これを、アヤさんに届けに来たの」

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  • from: エリスさん

    2009年12月04日 13時48分37秒

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    「阿修羅王さま御用心・7」
     ドアの向こうには、薄い萌黄地に唐花輪違い(複数の輪が交差し、その輪の中に唐風の花が描かれる模様)の着物を着た女生徒が、手に小さな風呂敷包みを持って、恥じらいながら立っていた。
     「沙耶、どうしたの? 今日は授業ない日でしょ?」
     「やだ、千鶴ッ。そんな格好のままで!」
     「ああ、大丈夫よ。ここ、男は来ないから」
     「そうだけど、ちょっと、背中こっち向けて」
     文芸創作科一年の紅藤沙耶(くどう さや)は、自分の恋人のホックをはめてあげた。 
     「恥ずかしいから、何か着てきて」
     すると、千鶴は意地悪っぽく笑って言った。「私の裸なんか、昨日も見てるじゃない」
     「馬鹿……」
     沙耶が真っ赤になってしまうのを見て、千鶴は一端引っ込んで、バスタオルを肩からかけて戻ってきた。
     「で? 授業ないのに、わざわざ私に会いに来てくれたの?」
     「うん……それもあるんだけど……」
     もじもじしている沙耶があんまり可愛くて、背の高い千鶴はすっぽりと彼女を抱き包んでしまった。
     「ちょっと、千鶴……人が見るから」
     「だから、見せびらかしてやってるの。知ってる? あなた、うちの科じゃちょっとしたアイドルなのよ。清楚な感じがいいって」
     「もう……単に優越感に浸りたいだけね?」
     「いいじゃない。あなただって、こんな格好いい恋人がいて、自慢でしょ?」
     「自分で言っていれば世話がないわ」
     それを聞いてクスクスッと笑ってから、何かの匂いに気付いて、千鶴は鼻をひくひくさせた。
     「……なァに、この酸っぱい匂い」
     「ああ、これよ」
     千鶴から解放された沙耶は、風呂敷包みを彼女に見せた。
     「祖母が作った梅干しなの。アヤさんに届けてくれるように頼まれちゃって」
     「ああ……そう」
     千鶴は途端に機嫌が悪くなった。――つい最近、親族との交流を絶っていた沙耶の祖母・紅藤沙重子(くどう さえこ)が、北上郁子の祖母・世津子(せつこ)と姉妹だということが分かったのだ。つまり、宿敵「永遠の風」の次期会長・北上郁子と、愛する恋人・紅藤沙耶とは再従姉妹(はとこ)だったのである。このことを、当人たちも二カ月前に知ったというのだから、驚きよりも馬鹿らしい話である。
     「あのね……それで……千鶴、サロンまで付いてきてくれない?」
     「あなたね……一人で行かれないんだったら、頼まれるんじゃないの!」
     「だって、おばあ様のお願いを断るなんて出来ないし、だけど知らない人たちのところへ行くなんて怖いし……」
     《箱庭》から読んだ人は信じられないだろうが、学生時代の沙耶は大層な引っ込み思案だったのである――そこがまた可愛い、という評判もあったが。
     「そのおばあさんが、北上さん家へ行けばいいじゃないの」
     「駄目よ。おばあ様はおじい様に嫁いだ時から、家の中に閉じ込められてるから、外出なんて滅多にしないの。電車の乗り方が分からないのよ。おばあ様は世田谷に住んでいるのよ。松戸のアヤさんの家までは遠いいわ。自家用車の運転手はおじい様の味方だから、絶対に連れていってはくれないし」
     沙耶の言い分も分かる。だけど、宿敵「永遠の風」、殊に宗像瑞穂とは会いたくない。けれど、そんな人たちのところへ愛する沙耶を一人で行かせるのも……。
     「分かったわよ。ついて行けばいいんでしょ?」
     「ありがとう! だから千鶴、大好きよ」
     「もう……」
     若い頃、沙耶にそっくりだった沙耶の祖母を、余所の男に取られないように祖父が屋敷に閉じ込めた気持ちが、すっごくよく分かるな――と思ってしまうぐらい、今の沙耶は愛らしかった。千鶴は周りに演劇科の生徒がわんさかといることも憚らず、沙耶の唇にキスをした。
     「そこの長椅子で待ってて、沙耶」
     紅潮して動けなくなっている沙耶を置いて、千鶴はシャワールームへ戻った。
     すると、先輩の一人が言った。
     「ホントに羨ましいね、あんなに可愛い彼女がいて」

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