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恋愛小説発表会〜時にはノンジャンルで〜

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  • from: エリスさん

    2011年12月23日 11時35分29秒

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    年内はこれにて終了

     次の更新は年明けになります。
     ブログは引き続き更新していますので、しばらくそちらでお楽しみください。

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  • from: エリスさん

    2011年12月23日 09時40分39秒

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    「夢のまたユメ・40」
     その日は休憩時間にナミから相談を受けた。
     「2月末に新人文学賞の公募があるんですよ」
     ナミも百合香と一緒で小説家を目指しているのである。2月末というと、出版社が何社か新人発掘のために文学賞の公募をしているのである。百合香も通った道なので覚えがある。
     「もしかして飛翔文学賞?」
     「なんで分かるんですか?」
     「私も以前はあそこに応募していたのよ。6年連続で応募したけど、最高が第3審査までだったわ」
     「え!? リリィさんでも落とされるんですか」
     「あそこは厳しいのよ。第5審査まであるでしょ? それでも読者が多いこともあって、応募者はかなり多いわ。それに、私でも、ってことはないわ。私みたいな稚拙なものは落とされる――ってことよ」
     「そんな。リリィさん、書籍出してるのに」
     「書籍を出せたのは、飛翔を諦めて水無月文芸社の“みなづき賞”に変えたからよ。それに“みなづき”でだって半分こっちが出費する共同出版の形態を取っているんですもの。あまり褒められたもんじゃないわ……とりあえず私のことはいいとして、あなたは飛翔に応募したいのでしょ。だったら頑張ってみなさい」
     「リリィさんが駄目だったのに、俺の作品が通用しますかね」
     「私の作品よりあなたの作品の方が下だなんて、誰が決めたの? 誰も読み比べた人なんていないのに」
     「俺が分かりますよ。俺はリリィさんの小説を読んでるんですから」
     「それはあなたが自分に自信がないから、そう思ってしまうだけよ。とにかく、やれるだけやってご覧なさい。駄目でもともとと思えばいいのよ」
     「はい……それで、相談というのはここからなんですけど」
     「あら、今までのは前置き?(^.^)」
     「前置きっていうか、つまりですね……」
     ナミは、百合香に自分の小説の添削をしてもらいたかったのである。
     「う〜ん、そういうのも自分でやるからこそ上達するんだけど……いいわよ。他人の意見を聞いてみるのも参考になるかもしれないし」
     「ありがとうございます!」
     「いっぺんには読めないから、少しずつメールで送ってきなさい。パソコンの方にね」
     「はい、じゃあ今日さっそく、家に帰ったら」
     「楽しみにしてるわね」
     話しているうちにナミの休憩が終わる時間になってしまったので(15分ずらして順番に休憩を取るようにしていた)、ナミが休憩室を出て行った。百合香は残る15分で急いで昼食を取ろうと箸を手に取ると、次はマツジュンが入ってきた。
     「リリィさん、相談に乗ってください!」
     「今度はあんたかい!」
     仕方ないので、彼の場合は食べながら聞くことにした――マツジュンのは就職活動のことだった。元OLの百合香は後輩たちにとって、その問題に関してはエキスパートだと思われてしまっているのである。だがしかし、
     「私が就職活動していたころと、今の人たちの就活とはかなり違うのよ」
     「でも、ファンタジアに来る前に転職活動してましたよね」
     「まあ、ちょっとだけね」
     「その時のことを参考にさせてほしいんです」
     「参考になるかなァ……それで? どこに就職したいの」
     「東映です!」
     「よし! 話を聞こう」
     この二人は仮面ライダーオタクだった(-_-;)

     急いで昼食を終わらせた百合香は、休憩室を出てタイムカードに休憩終了の打刻をした。ちょうどそこへ榊田玲御マネージャーも休憩を終えて打刻しようと歩いてきた(マネージャーは休憩室とはパーテーションで区切っただけの隣室・事務室で休憩を取っている)。
     「休憩中なのに大変でしたね」
     榊田に言われて、タイムカードを刺しながら百合香は言った。
     「聞いていらしたんですか?」
     「聞こえるんだよ、壁(パーテーション)が薄いから」
     「年功者の役目なんでしょうね、これも」
     「僕も近いうち相談に乗ってもらおうかな」
     「あら、どんな?」
     「僕って、この会社に向いてるんでしょうか……」
     「それは(^_^;)……私より大原さんとかの方が……」
     もはや上司よりも年上になってしまうと、こういうこともある百合香だった。

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  • from: エリスさん

    2011年12月16日 13時55分24秒

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    「夢のまたユメ・39」
     その日の鍋はちゃんこ鍋だった。
     「あ、白菜おいしい!」
     翔太は一口食べただけで感動した。
     なので百合香は言った。「お父さんが新潟のご近所さんから貰ってきたのよ。治療費の代わりにもらったりもしてるのよね?」
     最後の方は一雄に言った言葉だった。一雄は笑顔で頷いて、翔太に言った。
     「どんどん食べてください。ご飯もおいしいですよ」
     吃音症なのでなるべくゆっくり、分かりやすいように喋っていた一雄に、翔太は満面の笑顔で言った。
     「ハイ! 遠慮なくいただきます!」
     初めのうちは緊張していた翔太だったが、一雄や恭一郎の人柄に触れて打ち解けられたようだった。それに今日は姫蝶も懐いてくれている。
     翔太はそれから二時間ほど宝生家にお邪魔して、帰ることにした。
     「ありがとね、お父さんの話ちゃんと聞いてくれて」
     百合香は玄関まで送るときにそう言った。
     「全然大丈夫だよ。お父さんもゆっくり喋ってくれたし、そんな気にすることないんじゃない?」
     「そうなんだけど……人によっては、お父さんの喋り方に嫌悪感を抱く人もいるから」
     「まあな……でも、俺は全然気にしないよ。むしろ、俺、リリィのお父さん大好きだ。読んでる本の趣味も一緒だったし、また会いに来るって伝えておいて」
     「うん、ありがとう。暗いから気を付けてね」
     翔太が帰ると、杖を突きながら一雄が玄関まで出てきた。
     「いい青年と知り合えたな、百合香。父さんは安心したよ。きっと母さんも安心している」
     「お母さんはどうかな……? でも、お母さんにも認めてもらいたいぐらい、いい人よ」
     「そうだな。そのうち向こうのご両親にもご挨拶に行かないとな」
     「それは気が早いわよ(^o^)」

     そうして2010年も終わり、2011年が明けた。
     元旦は当然のごとく映画館にとっては「今年最初のファーストデイ」だった。
     「今日はシネマファンタジアだけでなく、このショッピングモール全体が大賑わいになります。まず、千本引き(福引)のお客様が間違えてファンタジアのチケット販売の列に並ばないよう、フロアスタッフはこまめなご案内を……」
     朝礼の業務通達にもやや力が籠ってしまうほどの緊張感。
     そしてショッピングモールのシャッターが開けば――即座に大盛況。
     「こちらは映画館へ上がるエレベーターです!」
     百合香は1階のエレベーターホールで大きな声を上げて案内をしていた。「3階店舗の福袋をお買い求めのお客様は、中央入口のそばのエレベーターからお上がり下さい!」
     すると子供連れのお母さんが声をかけてくる。
     「ちょっと! おもちゃ屋さんの福袋を買いに来たんだけど!」
     「はい、おもちゃ屋さんの〈ドリームランド〉ですね(3階にある)。そちらは中央入口のそばのエレベーターから上がってください。エレベーターを降りるとすぐに福袋販売の行列になります」
     すると別の50代女性からも、
     「ユキマロ(化粧品店)は!」と聞かれ、
     「そちらは2階の店舗ですね。あちらのエスカレーターからお上がり下さい。あの最後尾の旗を持っている人がユキマロの店員さんです」
     吹き抜け構造のおかげで二階の様子が見えたので、百合香は指さしながら案内をした。
     元日はとにかく、自分の店舗以外のところも把握していないと、正しい案内ができないから困ってしまう。
     そして福袋のお客さんが落ち着いた頃ファンタジアに戻るのだが、こっちはこっちでさらに大変なことになっている。
     「どっかで荷物預かってよ!」
     福袋を両手に持ったお客さんが、コインロッカーも全部ふさがっているので、映画を観終わるまで荷物を預かってほしいと頼み込んでくる。
     「恐れ入ります。お荷物のお預かりサービスは致しておりませんので」
     毎年のことながら、これを断るのも大変なことだった。
     元日を過ぎ、二日目もかなりの大賑わいになる。お客さんの数は落ち着いてくるのだが、周りの店舗がすごいのだ。売れ残った福袋や、さらに追加して作った福袋を売りつくすために、そこらじゅうで大声でアピールしているのが聞こえてくるのである。おかげでロビーの大画面で感動系の映画の予告編を流しているのに、かなりぶち壊しになってしまう――お互い様だから仕方ないが。
     三日になると、普通の土曜日・日曜日ぐらいの動員数になってきて、やっと落ち着いてくる。
     そして四日、ようやく百合香のお休みの日が来て、翔太との新年デートを迎えられた。
     「姫初めする?」
     「うん、いいよ」
     古風な言い回しで誘われて、素直に応じてしまう百合香――ホテルというところは、新年早々でも営業しているものだった。
     そして、五日、六日ときて、七日の七草粥の日。
     七草の時は新潟にいる一雄の弟が七草を全部送ってきてくれるので、翔太を宝生家に招いて七草粥を振る舞い……その日の夕方、一雄が新潟へ戻ることで、正月気分は終わった。


     1月8日からはファンタジアも通常営業に戻った。

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  • from: エリスさん

    2011年12月09日 13時01分19秒

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    「夢のまたユメ・38」
     百合香の家に着くと、玄関の前のスペースに翔太が初めて見る車が置かれていた。
     「あれ? この車って……」
     翔太の疑問に、百合香は普通に答えた。
     「そう、帰ってきてるの」
     「え? お兄さんが?」
     「兄じゃなくて……」
     百合香は自分が先に玄関に入って、言った。「ただいまァ!」
     すると奥から一人の白髪の男が出てきた。
     「お、おお、かえり」
     手に葱を持ったままの老人――そして吃音(きつおん)のしゃべり方で、翔太はすぐに悟った。
     「は、初めまして、お父さん! 長峰翔太と申します!!」
     翔太があわててお辞儀をすると、優しい笑顔で百合香の父・一雄は言った。
     「い、いいいらっしゃい。ま、まあ、ああがって」
    【作者注・ここから先の一雄の台詞は、本来は吃音であっても、普通の言葉で表記します。ご了承ください】
     「入って、翔太。お父さん! ご飯は二階で食べるんでしょ?」
     「そうだよ。お兄ちゃんも待ってるからな」
     「うん、分かった……こっちよ、翔太」
     百合香は緊張してまごついている翔太を、ちょっと強引に二階の仏間に連れて行った。そこには、テーブルをふきんで拭いている恭一郎がいた。
     「ただいま、お兄ちゃん!」
     「お帰り……連れてきたな」
     恭一郎はふきんをテーブルの上に置いたまま、翔太に向かって正座した。
     「初めまして、百合香の兄・恭一郎と申します。ふつつかな妹ですが、よろしくお願いいたします」
     「こ、こちらこそ!」と、翔太もその場(廊下)に正座した。
     「長峰翔太です。若輩者ですが、よろしくお願いします、お兄さん!」
     「うん、まあそこじゃなんだから、入って。寒かっただろう」
     「はい! 失礼します!」
     翔太がいつまでも緊張しているので、百合香は背中をポンッと叩いてあげた。
     「もう、そんなに硬くならないで」
     「いやでも……お兄さんに会う覚悟はできてたんだけど……」
     まさか父親まで家にいようとは思っていなかったのである。
     「二日前にこっちに帰ってきたんだ。父が新潟で整体師の仕事をしているのは知ってるね?」
     と恭一郎が聞くと、
     「はい、リリィから聞いてます」
     「そう。いつも月に一回は帰ってくるんだ。今回は正月にあわせてこの時期になったけど、いつもは月の真ん中ぐらいに帰ってくるんだよ」
     「そうなんですか」
     「まあ、先ずはコートを脱いで、そこに掛けるといいよ。百合香、お前も着替えて、父さんを手伝ってやって」
     「ハーイ」
     百合香は翔太を残して階下へ降りていった。すると姫蝶の鳴き声が聞こえた。
     「ハーイ! キィちゃん、ただいま〜」
     と言っている百合香の声が聞こえたので、
     「ああ、キィに捕まったか。しばらく戻ってこないな、あれは」
     と恭一郎が言ったので、翔太は、
     「やっぱり、姫蝶はリリィ――百合香さんに一番なついてるんですね」
     「百合香を母親だと思ってるからな。キィを拾ってきたときは
    まだ手のひらに乗る小さな子猫だったんだ。離乳したばかりで捨てられたらしくて……」
     「え!? 捨て猫だったんですか?」
     アメリカンショートヘアと言えば、ペットショップでは絶対見掛ける血統書つきの猫の代名詞である。それなのに、捨て猫が存在しようとは。
     「そうなんだよ。まあ、獣医に連れて行ったら〈これは雑種ですね〉って言われたんだけど――顔つきが洋猫よりも和猫に近いらしくて。つまり、母猫は血統書つきかもしれないけど、父猫が雑種だったから、元の飼い主が捨てちゃったらしいんだ」
     「ひどい話ですね」
     「まったくだ。まあ、キィは無事にうちに拾われたから、あんなに元気に育ってるけど、猫って普通5、6匹生まれるだろ? 他の子猫は大丈夫だったのかって、時々心配になるよ」
     「そうですよね……」
     二人がちょっと暗い雰囲気になってしまった時、百合香は姫蝶を抱えて上に戻ってきた。
     「なに? どうかしたの?」
     「いや」と恭一郎が言った。「キィを拾ってきた時の事を話してたんだ」
     「あら。だったらもっと楽しい顔してよ。ホラ翔太。今日ならキィちゃんに触れるわよ」
     「へ?」
     見ると姫蝶は、百合香に抱っこされながらも、頭や首筋を百合香の体にこすり付けて、グルグルっと言った鳴き方をしていた。
     「あれ? なんか、前に見たときと雰囲気が違う」
     翔太の中で姫蝶はツンデレキャラのイメージだったのだが、今はデレデレもいいところだった。
     「キィちゃん今、発情期なのよ。発情期の時のキィちゃんは、普段は懐かないお兄ちゃんにも甘えてくるのよ」
     「え? そうなの?」
     なので恐る恐る手を出してみると、姫蝶は翔太の手に自分から頭をこすり付けてきた。
     「あっ、ホントだ! 可愛い!」
     「メス猫を飼うのはキィが初めてなんだけど」と恭一郎は言った。「発情期のメス猫がこんなに甘えっ子になるって知らなくて、初めは俺も驚いたんだ」
     「そうですよね。前に来たときは俺、姫蝶に引掻かれたのに」
     「それじゃ、二人でキィの面倒見ててね」と、百合香は姫蝶を恭一郎に押し付けた。「私はお茶碗とかを運んでるから」
     「お鍋も運んでやれよ」と恭一郎は言った。「父さん、もうそんなに重たいもの運べないんだからな」
     「分かってるって」
     と、百合香は階段を降りながら言った。


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  • from: エリスさん

    2011年12月02日 12時43分10秒

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    「夢のまたユメ・37」
     二人が注文した料理が出来上がり、百合香が席に戻ってくると、そろそろ時間だからと崇原夫妻はお出掛け(店を出る)することにした。
     「また会いましょうね、百合香さん。ネット小説も読ませていただくわ」
     「ええ、ありがとう。またね、沙耶さん。崇原さん」
     妹メイドたちと一緒に崇原夫妻を送り出した百合香は、翔太の隣に戻ってくると、
     「さっ、食べましょ」と翔太に言った。
     「うん、先にいただいてるよ。すっごくおいしい!」
     「でしょ? 晶子は学生のころから料理は得意だったのよ」
     すると晶子は自慢げに鼻で笑った。「これだけはユリ先輩に負けなかったものね」
     「店長さんもリリィ――百合香と同じ文学科だったの?」
     「いいえ、私は美術科のデザインコースよ。ユリ先輩と付き合ってたころはまだ高等部の美術科だったけど」
     「高等部?」
     翔太が聞いたので、代わりに百合香が答えた。「晶子は私の三つ下なの。大学部と高等部とに分かれてて」
     「あっ、そうなんだ」
     「でも私はデザイナーとしては全然ダメで」と晶子が言った。「それで早いうちに見切りをつけて、このお店を始めたの。いま流行のメイド喫茶をベースにしてね……そしたら、ユリ先輩と再会して……」
     「今じゃすっかり常連客ってわけ」
     と百合香はアイスティーをぐいっと飲んだ。「うん、おいしい!」
     「再会して……より戻さなかったの?」
     「そんな感じではなくなっちゃったのよね、お互い。学生のときは恋愛を楽しんでた――言っちゃえばファッションに近かったけど、この年になったらもう、ファッションでは済まなくなってくるし」
     「酸いも甘いも知り尽くしたよね、お互い」
     と晶子もしみじみ言った。
     「ホントね……」
     「でも私、今でもユリ先輩のこと大スキ!」
     「あら、ありがとう」
     と、百合香と晶子は同時に投げキッスをしたので、翔太は『オイオイ……』と思った。


     二人は一時間ほどで店を出て、また秋葉原の町を歩き出した。
     「次はどこ行く?」
     と百合香が聞くと、翔太は「上野に戻ろう」と言った。
     「え? なんで?」
     「上野にならあるから……」と言った翔太は、百合香の耳に口を近づけて言った。「ラブホが」
     「あら……」
     と百合香は苦笑いした。「嫉妬しちゃった?」
     「嫉妬もしたし、欲求も溜まった……リリィ、俺が知らないもう一つの顔みせるから、すっごいそそられる」
     「うん……」と百合香ははにかんだ。「じゃあ、連れてって」
     「連れてくけど、まだいつものリリィに戻んないでよ。さっきの〈お姉様モード〉を維持しててほしい」
     「え? そっちがいいの?」
     百合香はリクエストに答えて、高貴な微笑を讃えた。
     「じゃあ、案内して頂戴」
     「はい、よろこんで!」
     翔太は百合香の手を取ると、エスコートするように百合香を連れて行った。



     「リリィ! 寝るなァ〜!」
     裸のままうつ伏せで横たわっている百合香の体を、翔太は懸命に揺り起こした。
     「ああ〜……ごめん……今、起きる……」
     連日の仕事疲れもあり、ふかふかのベッドに横になってしまうと、つい先刻までの快感も手伝って眠くなってしまう。
     「リリィはすぐ眠くなっちゃうから、帰るときに困るよ」
     翔太が服を着ながらそう言うと、百合香は起き上がりながら言った。
     「眠くなるまで疲れさせたのはだァれ?」
     お姉様モードに徹していた百合香を、自分が征服している感じがたまらなくて、必要以上に絡まってしまった翔太だったのだが、だったら翔太にも言い分があった。
     「そもそもリリィが俺にやきもち焼かせたのが悪いんじゃないか!」
     「ああ……それは……」
     百合香は裸のままベッドの上で正座した。
     「すみません、私が元凶でした」
     「……いや、ごめん。俺も大人気なかった」
     百合香は下着だけ着ると、洗面所で顔を洗って眠気を取った。そしてタオルで顔を拭いているとき、翔太が聞いてきた。
     「もう、痛くはなかった?」
     「ん? ああ、そうね……」
     翔太と目合うのはこれが二度目。前回は百合香が男性との経験が初めてだったがために痛みを伴ったが……。
     「今日は痛いの忘れてたわ。もう大丈夫みたい」
     「そっか。女の人って、二度目は痛くないんだ」
     「いや、それって個人差があると思うよ。私はたまたま大丈夫だっただけかもしれないし」
     二人がホテルを出た時には、あたりはすっかり暗くなっていた。
     「家まで送るよ」
     と翔太が言うので、百合香は言った。
     「夕飯食べていって。たぶん、家に着いたらすぐに食べられるようになってると思うから」
     「ああ、お兄さんが作ってくれてるの?」
     「兄は手伝ってるだけだと思うけど……実はね……」


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