標題の他３篇が入った中篇集。
３姉妹の長女・静子は家庭の事情で結婚もせず働き、長年母親の介護をした後はひとりで古い屋敷に住んでいた。屋久島に住む次女の優子は、そんな姉に借金を申し込もうと上京するが、家屋敷は更地になっていた…「鞍馬」。
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篠田さんは長編になるとやたらと気合が入って超長編を書きますよね。昨年の「仮想儀礼」や「コンタクトゾーン」などなど。もちろん面白いんですが、長くて途中で飽きちゃったり電車で読むと腕が震えてくるなどの弊害があり、手を出すには勇気がいる。

その点、70〜100ページくらいの中篇はいい。
今回の「鞍馬」というお話。65歳の静子がお金目当てで近づいてきた男に財産を全て盗られてしまい、妹が探し当てた時は汚い木賃アパートでうずくまっていた。
だけど静子はその男と出会うことで人生の楽しみ喜びを知って、家族のために何もかも犠牲にしてきた自分の人生の空しさを悟るんだわ。だから騙されていることを承知でお金を出し、男が逃げるのを承知で一緒に鞍馬まで旅行に行くんです。

しかし…静子は最後の最後でちゃーんと男にも復讐をしていたんです〜。
実に切なくて怖くて、そして面白いお話でした。