エンポリのサント・ステファノ教会ですが、その外観は小さく地味、ところが中には幾つかの傑作があって、さながら小美術館のようです。

車の向こうに時計台がありますが、それが教会です。小さな通りに面しているので、教会の全景を写真に撮るのは簡単ではありません。
手前にあるのは映画館です。

この教会は特別展やコンサートの時以外は大体閉まっています。

私が初めてサンタンドーレア参事会教会美術館に入館した時の事ですが、可なりの時間をかけて鑑賞してから入口(出口兼用)に戻ったら、係の女性が「時間があれば良い人を紹介するから暫く待つことが出来るか」と尋ねるので、そのまま作品を見ながら待っていると、やがて５０歳くらいの男性が現れました。彼がサント・ステファノ教会の住職？さん（カトリックでは何と呼ぶのかよく分かりません）で、教会を案内してくれたのです。美術館と教会とは歩いて２，３分の距離です。と言う訳で、この教会のお宝美術品を解説付きで鑑賞することが出来たのです。

小さな通りの突き当りに教会の入り口があります。時計は動いていません。
この日は午後５時半に彼と待ち合わせました。

教会の案内板です。エンポリを訪れる観光客を殆ど見かけませんが、主要な見どころにこの様な案内板が用意されており、観光客にとっては大変有難いです。エンポリの観光案内所はよく整備されており、そこで貰ったエンポリの地図、パンフレットは他の多くの観光都市のものと比較しても見事なもので、これらは特筆されるべきものと思います。

ファサードのフレスコは剥離落剝しています。

１１月２日の午後６時近くとなると、中は暗くて、フラッシュ無しで写真を撮ってもダメでした。

という事で、最初に行った時の写真です。
マゾリーノの「聖母子と２天使」(フレスコ）で、保存状態が良いのはこれだけのようです。あちこちにマゾリーノのフレスコ断片やシノピエが残っています。

特筆すべきはカラヴァッジョの「洗礼者ヨハネ」(米カンザス・シティにある)の複製画で、コピーとしては大変出来が良いもので、本物と言っても其の儘通りそうに思えます。幾つかの美術館でカラヴァッジョのコピーを見ていますが、明らかにコピーと分かるものが殆どです。(特にウディネー市立美術館、アルベンガ教区美術館のもの）なお、この画像は本物からのものです。

ところで、エンポリと言う小都市の然程大きくない教会が幾つかの傑作美術品があること自体が私にとっては驚きです。こういったところにイタリアの奥の深さを感じてしまいます。

この教会の住職さんから、入り口近くに置いてあるノートに署名と何処から来たかを示す略図を書いてくれと頼まれます。それを見ると日本から結構訪れる人が多いことが分かります。

この教会で見ることが出来る秀作、佳作の作品リストを掲げて、この項を終わることにします。
パッシニャーノ：「キリスト生誕」
ビッチ・ディ・ロレンツォ：「最後の晩餐」(フレスコ、可なり剥離しています)「トレンティーノの聖ニコラ」
ヤコポ・キメンティ・ダ・エンポリ：「聖母被昇天の寓意」
ジョヴァンニ・カミッロ・サレスティアーニ：「エジプトへの逃避」「羊飼いの礼拝」
フランチェスコ・フリーニ：「ロザリオの聖母」
マリオ・バラッシ：「聖母被昇天と聖人たち」