･反知性の意味と事例
　反知性という意味は二通りあると言われている。一つは、智識層に対する敵意を持つことであり、今一つは、国家権力が、国民が知性を持つことは、権力を批判したり、反権力勢力になったりする可能性があることになるから、それを懼れて、国民が無知蒙昧になるようになるような、愚民政策をとることである。
　前者は、権力側が、既成の知識層を抑え込もうとすることに、後者は、智識層を造らないようにすることに注力することになるのである。その例を示そう。
　・クメ－ル・ルージュによる知識層の皆殺し
　１９７０年、左よりの政策をとっていた、カンボジアのシャヌ－ク国王を追放、亡命させ、米国の支援を受けてロンノル政権が誕生した。
　が、かねてから、カンボジア山間部で、ゲリラ活動をしていたクメ－ル・ル－ジュが活発化し、１９７５年、アメリカでベトナム戦に敗れて、ベトナムから撤退したためロンノル政権が崩壊。それを機に、クメ－ル・ル－ジュの指導者ポルポトが政権についた。
　貨幣制度を撤廃するなど、奇異な政策をとったポルポトは、従来の知識層は害悪をもたらす不用な存在として、それを一掃することを決定した。
　官吏、教師、医師、僧侶、軍人、技術者、芸術家等は全員逮捕され、虐殺されたのである。その数は、人口わずか１０００万人そこそのカンボジアで３００万にも達したと言われる。
　その皆殺し作戦は徹底を極め、眼鏡を掛けているだけで、知識人と看做され、逮捕、虐殺された、という話もある。
　これが２０世紀、最大の反知性事例である。