大阪市は、2012年、国歌君が代の起立斉唱を教職員に義務づける条例を制定した。他にはない異例の条例であった。
　これに違反する者は、再任用を拒否されることもあるという厳しい規定である。
　制定当時の橋本徹市長は、これは組織マネジメントの問題であるとして、しそう思想良心の自由の問題ではないと言っている。が、思想、良心の自由を侵害し、憲法に違反するような内容を持つル－ルを、教職員に強制するようなことは、組織マネジメントとしても間違いであると思う。
　かって、明仁天皇主催の園遊会のなかで、ある著名人が「私の団体では、起立して国歌を斉唱するように指導しております」と天皇に申し上げたところ、天皇は即「強制にならなければ良いと思います」と応じられたという。
　発言者としては、そう言えば天皇がお喜びになると思って、申し上げたのであろうが、思いがけない反応でギクッとしたことであろう。
　天皇は、この問題が世間で取り上げられていることをご存じで、そうお応えにになったのであろうが、いかにも明仁天皇らしい公正なご判断だと思う。
　君が代とは、現天皇のことを示す詞であることは政府見解となているから、国民主権の日本国の国歌としては相応しくないという論も成り立つと思う。
　が、天皇は、日本国及び日本国民統合の象徴として憲法にも規定されていることだし、君が代の名で長く日本人に親しまれている歌であることから、そんなに目くじらを立てないでも良いではないかと思う。
　どこの国の国歌であろうと、それが斉唱されている時は、起立するのが国際的なマナ－として確立されてもいるのだから、せめて起立するくらいはやるべきであると思う歌わないで「口パク」だけでもやれば満点であろう。そのくらいの妥協はすべきであろう。
　村上新八