その具体策としては、所得格差を是正するための累進課税率制による富の大きさに応じた税負担の公平、年金、医療、介護などの福祉や、地域間格差是正のための交付税制度などがある。
　一般には、累進課税は所得の再分配だ、などと言われている。が、再分配というと、富裕層からカネを徴収して、貧困層に分け与えるような感じを持つが、そうではなくて、国家経営に必要な財源の負担割合を富の大きさに応じて調整するということなのだ。
　これらの制度は、社会主義的制度と重なるが、社会主義特有の制度ではなく、自由な市場競争原理を尊重する保守主義でも採用されている世界の趨勢なのである。
　この考え方は、ベンサムの「功利主義」すなわち「最大多数の最大幸福」の思想に由来するものではない。
　経済面で最も効率的な制度である資本主義を推進しながら、その弱点である、富の偏在や貧富の格差を是正するために必要な措置だからである。
　従って、貧困層が占める人口比率が最大ではなくても、実施すべき政策だからである。この場合には最大多数の最大幸福とはならないのだ。