東京の叔母さんが倒れた。
脳梗塞だそうだ。
私が浪人時代からお世話になり、
いつもいつも可愛がってくれた叔母さんだった。
90歳にあと少し。
八百屋の店をきりもりしながら、
本当に働き続けた人だった。

ところが、2年前に主人である叔父さんが亡くなった。
それからは、財産がある故に、
３人の男兄弟にいろいろと相続のことでごたごたがあったらしい。

我が家のように金の無い家には想像がつかないが、
地下鉄のための店舗の移転や、
実家の１階に開いた蕎麦屋の大繁盛など、
とにかく金、金、金なのだ。

叔母さんが倒れたことが我が家には知らされなかった。
ひょんなことから知った情報で、
そちらに問い合わせても、
嘘で固めて、
叔母さんが倒れたことは私たちには知らされなかった。

欲はいらない。
人情だけでいいではないか。
三人兄弟が親の残した財産と、
自分の取り分のことだけで汲々としている現実に、
あほらしく、腹が立って仕方なかった。

金は、何もしてくれないのだ。
実の母親が倒れて、
生死の境を彷徨っていても、
兄弟たちは牽制し合い、いがみ合い、
その嫁たちは、新潟から母たち叔母たちが訪ねられると困るから、
嘘八百を並び立てた。

情けない話である。

我が親戚の恥をここにさらす。
欲に生きるな。
情で生きろ。
そんな単純なことが言いたくて、
ここに記した。

明日、82歳の母と叔母さんたち6名は、
新潟駅の始発の新幹線で東京に向かう。
いつものように手助けしてやれない自分自身をもどかしく感じている。

分かって欲しい。
世の中、金ではないのだと。