親父が趣味の世界を爆走している間、
家庭のことを一切忘れていた。
その間、長男はセンター試験に向けて勉学し、
次男は、中間テストに向けて勉学をさせられていた。
妻は、懸命に家庭を守り、維持をした。

父は、この8ヶ月の間に自分の墓を建て、庭掃除を開始した。
母は、7時には寝るようになり、82歳の人なっていた。

私は、とにかく疲れが抜けない。
月曜日は、実に実に悲惨な状況であった。
一気に何事もやってくる。
それが私だった。
だから、あれから毎日酒を飲み、早目に寝ている。
これからの楽しみは、アルビのJ1の試合と天皇杯の結果である。
元旦は、東京日帰りを覚悟している。

さてさて、非日常の仮想世界から、現実世界に引きも出された。
何故か不思議な虚しさと虚脱感とを感じている。
二日間、何とかせねばとそればかりだった。
人が何と思おうと、私が決定し、私が支持を出す。
ぶれてはいけない。迷っている暇もない。
とにかく停滞せずに70名劇団員を動かし、舞台を作り、撤収するのだ。
そして、400名以上のお客様に楽しんでもらうための、
全体の準備、アナウンス、誘導、お礼、講演会の設定、まとめの挨拶。
最後は、慰労会の設定と準備をお願いする。

よくやってきたと自分を褒めたい。
慰労会で舞台監督に本音を語ったら、
「汚れ役は必要ですよ」と慰められた。
とにかく我侭で自己中なHにはほとほと嫌になった。
そのストレスがこんなに私を疲れ、痛めつけたのである。
だから、私は近づかなかった。
それでも伝令を飛ばして文句を言ってくるのだ。
駐車場係の人と打ち合わせていたら、
「煩いからやめさせろ」と伝令を寄こしてきた。
これから3時間強風の中で仕事をしてもらう人たちである。
「馬鹿野郎」と伝令を返した。

今思い返しても腸が煮えくり返る。
しかし、喧嘩しては、劇団の雰囲気が台無しになってしまう。
だから、怒鳴られてもひたすら謝り、
無理難題についても根気強く耐えるしかないのである。
「お前は何様なんだ」と怒鳴ることは簡単だが、
こういう長者もまとめていかねば、制作の使命は果たせないのだ。

自分のことだけを考える人。
全体を考え動ける人。
それは、今回のテーマでもある
「聴く耳」と「見る目」をもっているかどうかの違いなのだ。
愚かな人には、この二つ持ち合わせがないのである。

さてさて、二度とHとは仕事をしないという選択肢を私は選んだ。
そろそろクマは、趣味の世界では冬眠に入ることにした。
来年の春からは、一切をやめて、山に専念するつもりである。
山の気をもらわなければ、
この人間界では生きていけないのだ。