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親父たちよ

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  • from: クマさんさん

    2012/02/11 07:38:07

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    アームレスリングの夜

    金曜日の夜が、一番心穏やかで、喜びあふれる時間である。
    大雪の中、新潟駅前に向かった。
    携帯電話が破壊寸前なので、ドコモに寄った。
    親切丁寧な対応に感動だった。
    何とか安い機種で救われそうだ。

    それから待ち合わせの場所に向かった。
    そこに長身でプロレスラーのような体格のGが立っていた。
    彼と二人で呑むのは、実に何年ぶりのことだろう。
    呑み放題1000円のお店に突入した。
    ところが満員のため、二人で狭いカウンターで並ぶことになった。
    でかい背中が二つ。おかしなものだった。

    とにかく90分一本勝負だ。
    「ここから、ここまで呑んでみるは」と、
    呑み放題の焼酎のメニューを指でなでた。
    グラスが来ると、すぐにそれは空になった。
    「ボタンを押して」と、お店のお嬢様を呼ぶと、
    「これください」と、次の酒を注文した。
    そのたびに、私も負けじと注文するので、たまったものではなくなった。
    「昨日は、焼酎のボトル一本を空けてしまった」と、彼は笑う。

    毎日スポーツジムに通い、ウエイトとスイムで肉体を改造して鍛えている。
    薄手のウインドブレーカーを脱いだら、半袖のTシャツだった。
    おいおい外は大雪だてば。
    「この胸触ってみた」と、私に筋筋の胸板を突き出して来る。
    おいおいここで男の胸に触れてか。
    私は言われるまま彼の胸に触り、「ホントだ」と驚いた。
    上腕の筋肉は、ボールのように盛り上がり、まさに圧巻だった。

    そんな彼がトイレに行ったまま帰って来なかった。
    しばらくして、やれやれという顔で席に戻ってきた。
    「いゃーっ。アームレスリングを挑まれてさ、ひと勝負やって来たて」と、笑っていた。
    私は目が点になってしまった。
    「千葉の若者なんだて。通りかかったら呼びとめられてさ」
    「アームレスリングやりませんかというから、やってきたんだて」
    「いやいい勝負でさ。大喝さいらったて」
    そんな話をこともなげに語る男が彼なのだ。
    「そうか。アームレスリングやって来たか・・・」と、言葉を失う私だった。

    彼とは、30年以上の友達だ。
    私たちはお互いに臨時職員という厳しい立場で仕事を続けていた。
    ある時から意気投合し、何でも本音で語り合える友となった。
    独身時代は、よく私の襤褸家に泊まりに来た。
    とにかくよく食べ、きちんとしているので、母は彼のことが大好きだった。
    採用試験の日、彼と二人でテニスコートのベンチで弁当を食べた。
    彼は、結婚を約束した彼女の手造りの弁当だった。
    私は、母の手造りの弁当だった。
    これからどう生きるのか。
    30を過ぎた男二人が、空を見上げて、弁当を食べていた。
    その年、私と彼とはめでたく採用になった。

    彼は、その弁当を造った彼女と結婚し、私も同じ年に結婚した。
    そんな話が懐かしく、いつの間にか私たちは11時近くまでそこにいた。
    「30分延長で520円ですが、どうしますか」
    「もちろん延長でしょう」と空のグラスを店員に手渡し、次の焼酎を注文していた。

    90分一本勝負のはずが、無制限一本勝負となってしまった。
    アームレスリングの勝敗を彼は語っていただろうか・・・・。
    お陰様で頭が痛い土曜日の朝である。

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    さけ

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