奥歯に詰めていたものがとれてしまった。
昨日歯医者に行ったら、突然「麻酔をかけます」と言われビビってしまった。
大工事になりそうで何だか怖くなってしまった。
何の心の準備もなく、医師は私の奥歯を削り始めた。
工事の途中で鏡を使って中を見た。
虫歯は奥までも浸透していた。
こうして一つ一つが駄目になって行くようだ。

月曜日の朝、体がだるくて仕方なかった。
肝臓がやられているかもしれないと思った。
あの疲労困憊感と無気力感とは、やっぱり体のどこかが悪い証拠だ。
禁酒日は、いつの頃から忘れてしまった。
休日もやっぱり休日だからと呑み続けている。
休む日が無ければ、やっぱり肝臓のダメージは大きくなるだろう。
ガンマはいつも平常値の2〜3倍の高値安定で推移している。
こうして一つ一つが駄目になって行くようだ。

左膝の痛みがとれない。
階段を上がるたびに切なくなってしまう。
このままだったら、走ることもできなくなり、
今年こそはと考えていた登山も諦めることになる。
たった一日無理してスピードを上げて走っただけなのに、
その時の膝の悲鳴を私は聞いていなかったのだ。
階段を登るたびに情けない気持ちになってしまう。
こうして一つ一つが駄目になって行くようだ。

とは言っても、それは人間なんだから当たり前のことでもある。
６０億の細胞・３８億年からの命のバトンリレー。
私の体は生モノであり、ピークを越えて下山中なのだから、
日々の老化は受け入れざるを得ないのだ。
こうして今日も生きている。
それは本当はとてもとても不思議なことに違いない。
ここに生まれ、ここに生き、ここで出会い、ここで暮らす。
私はここでよかったなぁとつくづくと感ずる。
私は何だか今にとても満足している。

虫歯だって、肝臓だって、左膝すらも、みんな声を出していたはずだ。
ここまで駄目になる前に、私がその声なき声を聴いていたら、
もっと早く何かが変わっていただろう。
日々下山する私は、生き抜くためにはその声なき声を素直に聞くべきなのだ。

そして、もっと大切なことはよき隣人として、
かかわる一人一人の心の声に耳を傾け、
見て見ぬふりをしないことだろう。
見て見ぬふりをしない。
それは、体にも心にも大切な生き方なのだ。