新規登録がまだの方

下の[新規登録]ボタンを押してコミュニティに登録してください。

新規登録(無料)

登録がお済みの方はこちら

コミュ二ティポイントのご案内

詳しく見る

親父たちよ

親父たちよ>掲示板

公開 メンバー数:62人

チャットに入る

サークルに参加する

サークル内の発言を検索する

新しいトピックを立てる

サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。

閉じる

  • from: クマさんさん

    2012年06月26日 22時15分30秒

    icon

    夜中から夜まで、ノンストップだ

    さてさて、怒涛と激動の三日間だった。
    全てのことは全力疾走で、そして、やり遂げるための全力投球で。
    しかし、思い出すこともできないほど、
    これでもかこれでもかといろいろなことが次々と押し寄せて来た。
    しかし、乗り切るためには、力を抜いて対応する必要があった。

    母が、我が家に帰って来た。
    そりが夜中の3時くらいだったろうか。
    そこから、セレモニーを実に親切なお兄さんとの段取りが始まった。
    とにかく、何が何だか全く見当のつかない男なのだ。
    セレモニーの人だけが、これけから先の道案内だった。
    会場を決め、今後の決めごとの手順を教えられ、
    それを、その日の朝までに仕上げねばならなかった。

    夏至の近くである。
    4時前には白々と夜が明けて来た。
    それでも、この話は終わることはないのだった。
    棺桶の値段。お斎の料理の値段。引き出物は何にするか。それを書く用紙はどのように記入するか。
    とにかく、落ち度のないように細かな仕事の指示が入る。
    その一つ一つを決定して、渡さねばならないのだ。
    いつしか、6時近くになっていた。
    本日は、徹夜である。
    母は、座敷で眠っていた。

    騒ぎことでは、親戚の人たちのいろいろな想いも絡んで来る。
    まず、ゴットマザーの意向に沿ったものにしなければならないのだ。
    だから、何でも相談、相談、相談である。
    母は、この親戚のおばちゃんたちのリーダーであり、コーディネーターであった。
    叔母ちゃんたちの喪失感と不安感は、近くに居る私にはひしひしと伝わって来た。
    何事も、K叔母ちゃんに相談して決めた。
    従兄弟たちの全面的な支援を得ることもできた。
    まず、いつ・どこで・だれが・何をなのである。

    その日のうちに、納棺の儀式が決まっていた。
    私は、眠らないでいることで妙に興奮状態のまま、
    昼食のドライカレーを自分で作っていたら、
    「おくりびと」が美しい女性を連れてやって来た。
    親戚の叔母たちも午後一時を目途に集まって来てくれた。
    これから、我が家の座敷で納棺の儀式が行われるのだ。

    死者を死者として、死出の旅に出る支度を整えるのが納棺師の役目だった。
    お兄さんが一つ一つの技を何故するのかと説明があった。
    「なるほど」と、合点がいくのは、私も日本人の一人だからだろう。
    真っ白い着物に着替え、母に孫たちが足袋をはかせていた。
    脚絆を手の甲に捲き、五円玉の描いた紙を入れたズタブクロの紐は、
    決して落ちないように玉結びにするのだった。
    全ての所作が日本人的なのだ。
    ここに日本人としての文化があったことを、改めて知らされた。

    生前の美しさを取り戻すために、死に化粧をした。
    白粉を塗り、眉を描いたり、唇に紅を差したり、髪をとかしたりした。
    母は、極端に痩せてしまったので、頬には綿をつめてもらっていた。
    元の病気前の母の顔に戻ってきた。
    私は、その変身ぶりに目が点になっていた。
    それはそれは、見事なものだった。
    映画「おくりびと」にも登場したあれだった。

    「いかがでしょうか。」
    そう問われて、私には言葉がなにかった。
    「お母ちゃん・・・・。」まさに、ちょっと前の若き母なのだ。
    しかし、どこか違和感があったので、
    「唇の紅をもう少しお願いします。」
    妻は、
    「眉毛をもう少し、お婆ちゃんは、眉毛を描いていたと思います。」
    そのアドバイスを受けて、美しいお姉さんが、筆で紅を付け、眉毛を描いた。

    まいったなぁ。そこには、母がいるのだった。
    その母の美しさに、感動だった。
    そして、母はみんなの手により、棺に納められた。

    • コメントする

      サークルで活動するには参加が必要です。
      「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
      ※参加を制限しているサークルもあります。

      閉じる

    • 0
    • 拍手する

      サークルで活動するには参加が必要です。
      「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
      ※参加を制限しているサークルもあります。

      閉じる

    • 2

    icon拍手者リスト

    さけ 秋桜

コメント: 全0件