新規登録がまだの方

下の[新規登録]ボタンを押してコミュニティに登録してください。

新規登録(無料)

登録がお済みの方はこちら

コミュ二ティポイントのご案内

詳しく見る

親父たちよ

親父たちよ>掲示板

公開 メンバー数:62人

チャットに入る

サークルに参加する

サークル内の発言を検索する

新しいトピックを立てる

サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。

閉じる

  • from: クマドンさん

    2014年10月13日 08時36分17秒

    icon

    走りぬいた私という私

    走るって何だろう。
    どうして私は走るに向かうのだろう。
    確かに走っている最中は苦しく、辛く、そしてからっぽなのだが、
    その走りの中で走っている自分を離れたままで見つめていると、
    ここで走っている私は、どうして走っているのかと、不思議に想った。

    ここまで走りこんできた自信はなかった。
    スタンドでも独りだった。
    ウォームアップする仲間もいない。
    それでも、晴天のお日様を浴びて、スタンドの椅子に腰かけて出発を待った。

    体が重かった。次々とゆっくりだが後続の人たちに抜かれて行った。
    スピードは、この体には期待できなかった。
    もはや自分の体でありながら、自分のものではないような違和感を感じた。
    「おいおい、オーバーペースだよ。」
    声をかけるが、やっぱり少々負けたくないのか、前走の女性について走る。

    萬代橋をこんなはずではなかったと後悔しながら下ってきたら、
    「クマさん、がんばれ」と、声がかかった。
    あっTさんだ。そう感じたとたんに、体と心に確かに何かの変化が起こった。
    声援とは、そんなすごい力があるものだ。
    私は、手を挙げて右に曲がった。
    そこから、「20分間走っていたら、調子がでるはずだ」と、自分に言い聞かせた。
    走ることは、対話だった。

    目の前に軽快な足取りで走る、中年の女性がいた。
    鍛えられたいい走りだった。正確に同じペースを刻んでいた。
    私は、その駆けていくジョギングシューズのテンポを見つめながら、
    そのテンポとリズムとに同調していく私を感じた。
    きっちりと1㌔6分間の走りだった。
    それは、彼女が長い長いトレーニングで会得した感覚だと感じた。

    60分を切れるのか。いや、60分をめざしてもいいかも。でね、できるのか。
    体重80キロ、そろそろ左膝と右の太ももが痛む距離だった。
    5キロを超えた。確か30分より前だったと思う。
    このまま行けたら、50分台も夢ではないと思ったとたんに、
    県庁前で失速してしまった。
    しかし、ここで落ちたら、
    そのままずるずると落ちて行ってしまうことが、目に見えていた。
    これが走るの岐路だった。まさに踏ん張りどころなんだ。

    平成大橋をゆっくりと足の痛みをチェックしながら登った。
    若い家族連れの声援や、老人夫妻の声援があった。
    それが何だかスロモーションの遠い世界から発信されたような感覚だった。
    私は、信濃川の上を、私として走っているのだろうか。
    ただ、タイムは私に対して、「切れる位置にある」と伝えてくれた。
    後は、やるか、落ちるかのどっちしかなかった。

    116号を集団が左に折れて行く。
    私はコースを記憶違いしていたようだ。
    「えっ、関屋分水を渡らないの」
    やすらぎ堤下のアスファルトだった。
    ゴールまで後2.5キロ。時計は、残り12分だった。
    「ペースを上げれば、間に合うはずだ」と、私は私に言い聞かせた。
    壊れるかもしれないよ、でもそのリスクは今の私には必要だよ。
    この距離を残して、このタイムは予想外のタイムだよ、チャンスだよ。
    膝を壊したら。心肺停止になったら。倒れてしまったら。どうする。どうする。

    いや、それでもやっぱりここで落ちたら、きっと後悔するよ。
    まず、行けるところまで、いってみないか。
    そうだなぁ、ここが踏ん張りどころかな。
    抜かれていたばかりの私は、ここから抜き手となって、
    ランナーの隙間を縫って、スピードをあげた。
    「うっ、うっ、うっ」と、声にもならないいつもの唸りで、
    前を行くランナーの背後に迫り、そのランナーを後ろに置き去る。

    競技場までの距離が縮まらない。
    残り1キロ。6分を割っていた。つまり、5分ペースで走らなければ間に合わない。
    あの水色の土管を渡す鉄橋が近づいて来た。
    競技場は後少し。呼吸で胸が張り裂けそうだった。
    それでも、腕を振った。トラックに入った。
    フィニッシュは、第四コーナーだった。残りの直線百数十メートル。
    25秒前。ああ、もう少しなんだ。もう少しで60分を切れるんだ。

    しかし、その道半ばで無情なアナウンスが聞こえた。
    あと、数十メートルだったのに、
    「只今9時になりました。スタートから1時間です」と。
    それでも、やっぱり最後はと猛然とダッシュした。
    息が続かず、苦しくて苦しくて苦しくて、
    喜びより倒れそうな自分を支えることがやっとだった。

    「終わった。」
    私は、よたよたとしながらランナーの流れに従いトラックを歩いた。
    「終わるために、必死で走る。」
    後続のランナーが次々とトラックに入って来る。
    みんなも終わるために、懸命にスパートをしていた。

    私は、私の膝やふくらはぎや太ももに心から感謝した。
    そして、ゴールを目指して唸りながら走っている時、
    思いがけずに「クマさん、頑張って」と、親子の声で大声援がかかった。
    私は、そこで息を確かに吹き返した。
    だから、Tさんと、その親子に、私は心から感謝した。
    支えられていることの、応援されていることの、ありがたさだ。

    私は、思い出した。
    スタート地点で、独り集団の中で待っている時、
    両手で優しく、愛おしく、この両足の膝を撫で、
    ふくらはぎとふとももをなでたことを。
    「頼むな。走ってくれよ。」

    走るって何だろう。
    この疲労感の中で、この記録を書いている。
    走っている自分が居た。
    そこには、やっぱりもう一人の自分もいた。

    走ることとは、そのもう一人の自分との対話だった。
    その自分とは、とても優しく、愛おしく、走っている自分に語り掛けている。
    「大丈夫だよ。やれるさ。きっとやれるよ。」

    そして、声援が力になることを実感できるのは、
    最も自分が痛み、苦しみ、力尽きようとする瞬間だった。
    力は生まれるものだ。
    そんな自分を見たくなって、人は走るのではないだろうか。
    走りぬいた私も、私なのだから。

    • コメントする

      サークルで活動するには参加が必要です。
      「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
      ※参加を制限しているサークルもあります。

      閉じる

    • 1
    • 拍手する

      サークルで活動するには参加が必要です。
      「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
      ※参加を制限しているサークルもあります。

      閉じる

    • 2

    icon拍手者リスト

コメント: 全1件

from: wakaさん

2014年11月04日 11時36分41秒

icon

私は第一回からしばらく連続出場しました。
もうダメです。体力・気力の両方がXです。
素晴らしいね!

  • コメントする

    サークルで活動するには参加が必要です。
    「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
    ※参加を制限しているサークルもあります。

    閉じる

  • 拍手する

    サークルで活動するには参加が必要です。
    「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
    ※参加を制限しているサークルもあります。

    閉じる

  • 0

icon拍手者リスト