Ｈさんからのメールに書いてあった。
「クマさん、あなたは幸福な人かもしれません」と。
そうかなぁ、私は、幸福なのかなぁと、
私はそのメールを見ながらしばらく考えていた。

すると、彼女からまた返信があった。
彼女は世界を歩いている人だ。
そして、貧しい人や辛い宿命を負って生きている人たちと出会っている。
その国のその時代に生まれた人たちは、その宿命から逃れらない。
どうして自分ではなく、その人たちなんだろう。
どうして自分は日本に生まれ、その人たちはそこに生まれ生きているのだろう。
つまり、Ｈさんが言うのは、
こうして私たちが飢えや戦争や難民となることもなく、
平和な社会で生活しているそのことは、
とても幸せなことなのではないかということだった。

当たり前のこの日々の生活をありがたいと感ずる心。
今日もこうして目覚めることができました。
今日もこうして１日を生きることができました。
今日もこうして身体を動かし、仕事することができます。
今日もこうして家族がみんな元気で暮らせます。
今日もこうして親父たちよを書いています。

視点を変えて見れば、私の生活は在り難い生活でもあった。
例え、ヘルニアであったとしても。
例え、58歳であったとしても。
例え、生きる希望を少しの間見失っていたとしても。
こうしてここに生かされ、ここで想いを記せることは、
慈悲であり、恵みであった。

私は、自分ではどうにもできない人生を生きている。
突然の胆石・腹膜炎・ヘルニアと、
次々と私の身体を舞台にして望んでもいない変化が起こる。
身体は確かに私なのに、
何だか私が私の身体を、あたかも誰かの身体のように感ずることがある。
このぱんぱんに膨れたお腹をさすりながら、
へぇっ、腸がはみ出しても人は生きているもんなんだなぁと、
そんな人を私が見ているように、見ていることもある。

でも、こうして生かされていることには変わりない。

昨日は、おかしな視点に立って人々を観ていた瞬間があった。
どうせ私はこんな身体。
もう死んだ人も同然なんだなぁと、
生きながらに死んだ人になったようなつもりになった。
すると、父や母がきっとそうなのだろうと想われるように、
目の前に居る人たちが見えてきた。

私は何だか心の底からぽかぽかと暖かくなり、
目の前に居るその人たちが実に実に愛おしく感じられてきたのだった。
このヘルニアの身体から遊離すれば、
私は、ただ自分として一人一人の人たちを見つめるだけ。
その想いは、ただの慈しみ。

その視点から、今度はそうやって生かされている私を観てみた。
すると、それが神の視点なのではないかと、ふと想った。
私も、この人たちも、そして紛争の最中に生きている人たちも、
きっとこの慈愛に満ちた眼差しで見つめられていることなのだろう。
そう想ったら、Ｈさんの言う言葉が腑に落ちた。

自分でも何を言いたいのかはっきりとはしないが、
これから残されたいのちの時間を、
私はそのことを分かるための時間としたいと願っている。
その道が、微かに感じられたような気がした。
その道はある。
私から離れ、自分として生きるなら。
または、生かされていることを感じ、感謝するなら。

Ｈさんの言葉が、私をこうして魂の旅に誘ってくれた。