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親父たちよ

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  • from: クマドンさん

    2016年06月20日 05時43分12秒

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    秋山郷の切明温泉は想像を絶する温泉だった

    究極の温泉だった。
    これまでの温泉の旅のこれはまさに最高峰の秘湯でもあった。
    秋山郷の「切明温泉」
    河原の湯は、その名の通りに河原に自噴する温泉で、湯船を作る。
    それも河原に転がっている石を使ってだった。
    これがまた解放感と野趣が溢れて、実に実に爽快だった。

    切明温泉は、秋山郷のどん詰まり。
    津南から険しい山道をひた走りに走って1時間の奥地にある。
    ここから30分で奥志賀高原だと聞けば、その位置も理解できよう。
    平家の落ち武者伝説。マタギと木工の職人の人たち。
    ここに至るまでが、まず冒険でもあった。

    土曜日の午後、さっそく長男と次男がスコップを携えて河原に降りた。
    すでにそこには二畳くらい石で囲った湯船ができていた。
    その脇はごうごうと渓流が流れている。
    温泉はぽこぽこと尻の下から湧き出ている。
    これが時には熱くて、悲鳴を上げることもある。
    それを渓流の水を入れながら、ちょうどよい塩梅にする。
    私は、この湯を「一番の湯」と命名した。

    真っ裸でごろりと仰向けになる。
    青い空と薄っすらと白くかすむ雲、新緑の緑が初々しく眩しかった。
    何もいらない。ここにある。
    次男はさっそく自分専用の風呂を作ろうと、大きな岩を抱えて積みだした。
    彼は、遊び心万歳だった。

    長男は、慎重な男。
    さてどうするかと、次男の孤軍奮闘を横目に、
    じっとスコップにもたれて考えている。
    そして、しばらくした後、彼は自分が持てる大きさの石を丹念に積み始めた。
    妻は、水着で「みんなの湯」にお尻だけつかっていた。

    その後ろの大岩の陰には、山から下りて来た親父が、
    ずっとずっと素っ裸でお湯に浸かって動かない。
    これを私は「親父の湯」と命名した。
    実は、親父が立ち去った後で試してみたら、実に丁度いい湯加減なのだ。

    次男はきっちりと岩を石畳のように積み上げ、牢固で頑丈な湯船を創った。
    「次男の湯」の誕生だった。
    そこへ、ビキニのお嬢さんを連れた中年の関西弁の男が登場。
    2人は、あちらこちらを探した後で、Nの近くに石を積みだした。
    「アベックの湯」が着々とでき始めてきた。
    長男は静かに、沈思黙考しながら、ゆっくりと石を積み、調整していた。
    次の日の早朝、私が独りで入りに来て驚いた。
    流木を丁度枕にして寝ると、肩や首からぽこぽこと温泉が当たり、
    実に癒し効果抜群の温泉となっていたからだ。
    そのデザインも円形で秀逸だった。
    お見事なる「長男の湯」だった。

    どれだけ今まで温泉に行ったことだろう。
    究極なる秘湯を求めて、登山の帰りには必ず地元の温泉に浸った。
    しかし、それはそこにある温泉で、人工的に作られている温泉でもあった。
    ここは、全く違っていた。
    私がここに来て、素っ裸になり、河原の石を積み上げ、温泉を創るのだ。
    人工的なものは一切ここには存在しない。
    水道もシャワーも、椅子も鏡も、窓も天井もここには存在しない。
    ただ、ぷくぷくとぽこぽこと河原の底から湧き上がる温泉だけだった。

    私は、河原でお湯を沸かして、ドリップのコーヒーを淹れた。
    菊水一番搾りを飲んで、ゆったりとお湯に浸かった。
    ワインのボトルを温泉につけて、ホットワイを作って妻に飲ませた。
    野趣溢れる自然の遊びだ。

    この体験に、私の心は満たされた。
    それは、幸福感とも呼べる心地よさだった。

    よく朝、5時にここにまた行った。
    たった独りぼっちの河原の湯だった。
    そこで、「次男の湯」と「長男の湯」に浸った。
    まさに至福のひと時だった。

    「父の日」の朝、息子たちの手作りの風呂に浸かった。
    こんな親父はきっとどこにもいないだろうと、嬉しさで魂がじんとしていた。

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