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  • from: クマドンさん

    2016年09月15日 05時58分39秒

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    Kさんの達観

    病院に行って来た。
    お腹の穴の肉は順調に盛り上がっているそうだ。
    いつも恐る恐るのぞくと、確かに浸出液が少なく、表面が固くなった。
    私は、生き物の一人なんだ。
    こうして、自然の蘇生する力によって、
    私の傷が少しずつ、少しずつ癒されている。

    身体のことは、身体に任せる。
    それでいいんだと、私の身体を通して学ぶことができた。

    「先生、この肉が盛り上がった跡、どうなるんですか?」
    「皮膚が出来て塞がりますよ。ケロイドのようになりますがね」
    そう聞かされて驚いた。
    この再生の物語の幕引きは、この身体自身がやってくれるのだそうだ。
    「ああ、ここまで盛り上がったらもういいか。」
    「そろそろ蓋をするために皮膚を創ろう。」
    どうしてそんなことを身体のほんの一部が認識して、
    その通り働けるのかが、不思議でならなかった。

    身体は、謎に満ちていた。

    病室を訪ねた。
    Hさんは、退院していた。
    手術を待っているKさんは、朝食を食べた後、テレビを観ていた。
    私の姿を見て、満面の笑顔で本当に喜んでくれた。
    元校長先生は、やっぱり人には優しく、温かい人だった。

    Hさんは、予定通りに開腹手術をしたそうだ。
    しかし、切り取って残る肝臓の機能が衰えていたので、
    そのままにして、摘出はしなかったそうだった。
    つまり、癌の部分を残したまま、短時間にまたお腹は閉じられてしまったのだ。
    今は、退院して近くの病院に通いながら、抗がん剤の治療だった。

    「俺は、人に合わせるの嫌らっけ、山には独りで登るんさ」
    何だか頑固な職人であり、凛とした侍であるHさんのことが懐かしく感じた。
    「そうですか。そうでしたか・・・・。」
    麻酔から目覚めて、その事実を医師から聴いたHさんは、
    どれだけ落胆し、心を痛めたことだろう。
    その瞬間、治癒すると言う希望が断たれてしまったのだから・・・・。

    「クマさん、私たちは身体を通して学んだ言葉がありますね」
    「その言葉を、ぜひ子どもたちに伝えてください」
    「どうして私たちは、利口になれとばかり教えて来たのでしょうね」
    「馬鹿になれ、ともっと本気で教えてやればよかったです」
    「この頭で考えることだけを教えることだと勘違いしていました」
    「身体ですね。身体で分かったことだけが真実でした。」

    85歳。お腹から胆汁の管を垂らした病衣のkさん。
    その笑顔には、何とも深い深い達観と教えとがあった。
    私は、笑顔で握手しながら、込み上げる涙を堪えた。

    真実は、この身体にあり。

    Hさんは、どんな気持ちで日々を生きているだろうか。
    「クマさん、何とかなるさ。心配してねぇよ」かな。
    65歳の彼もまた、この病によっていっそう達観した生き方を学んだ人だった。

    病院に行ってくるたびに、大事なことを学んで帰る。
    それは、ここに人の生き死にがリアルに存在しているからだろう。
    そして、まさに人生いろいろな生き様を目の当たりにするからだった。

    人は、かくしても生きている。
    ならば私は。
    その「問い」は、ずっとずっと持ち続けて行きたいと願っている。

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