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  • from: クマドンさん

    2017年02月13日 06時09分08秒

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    味わう。ただ味わう

    土曜日に、今年初めての「あき乃」だった。
    行きたくて行きたくてとは想っていたが、
    行けないこともあるもんだと自分のことなのにそう感じた。

    蕎麦の味は、いつもの味だった。
    野菜の天ぷらの中に、フキノトウが入っていた。
    嬉しかったなぁ。
    この苦味が私の好きな味だった。
    春菊の天ぷらもサービスしてくれた。
    ご主人のこうした心遣いがいつもいつも嬉しかった。

    「おいしいお蕎麦だねぇ」と、70代の上品な女性が勘定の時話して帰った。
    私ぐらいの中年の恰幅のいい男性が、もりを一つ食べて、すーっと帰った。
    「蕎麦湯を一つください」と、その頼み方に常連を感じた。
    ここの蕎麦は、確かにここだけの蕎麦だった。
    私は必然だろう、ある日、初めてこの店を訪れて蕎麦を食した瞬間、
    その味の虜となってしまった。
    味とは、不思議なものだといつも感ずる。

    その味の存在を知らずにこれまで生きて来たのに、
    いつか必ず「これだ」という味と巡り合うものだ。
    どうして「これだ」と言えるのか、感ずるのかはわからないが、
    その「これだ」は、やっぱりどこかに存在し、私との邂逅を待っている。

    お客が引けた後、しばらく店内は私だけだったので、
    ご主人と素敵な奥様と話す機会を得ることができた。
    60代半ば過ぎだろうか。
    前職はお役所勤か、教育関係だと予想している。
    蕎麦に魅せられ、退職してからの蕎麦屋の出店だった。
    会津八一をこよなく愛し、そのブログには本町や新潟の街の歴史にも造詣が深い。

    私は、蕎麦好きな同僚の話をした。
    「蕎麦の味って、その土地土地で全く違う味ですね。」
    「お店によっても、確かに違う。」
    「ただ、一般受けする蕎麦の味は確かにある。」
    「しかし、そんなお店には、一回行けばもう行く来はしない。」
    「そのご主人が、魂を込めて、お客さんに美味い蕎麦を食べさせようとするお店。」
    「私も彼も、そんな蕎麦屋さんを発見すると、他県でもでかけてその蕎麦を食べる。」
    「味って不思議ですね。その味を味わいにでかけるんですて。」
    「そして、やっぱり蕎麦って風土が創る味ですね。」

    そんな話をご夫婦で笑顔で聴いてくれた。
    「私ね。美味いものは、語ってくれる。そう感じる時がありますね。」
    「黙って、噛みしめ、味わいながら食べると、
     その時、確かに語り合っているんです。」
    「語り合える蕎麦、語り合えるパスタ。語り合えるラーメン。」
    「私は、その味と出会うと、とにかくその味だけを求めて通います。」
    「食べる時は、独りです。どうして、お喋りしながらこの蕎麦と語れますか。」
    「みんな食べているかもしれませんが、深く味わっていないのではと思います。」

    そうですねぇと、奥様が笑顔で肯く。
    「やっぱりね。語れる味には、深い深い魂が込められているんですね。」
    「十日町のYは、蕎麦の名店で、あの店の前を通るたびに、私は食べに行きました。」
    「ある日、行ったら、あれだけいつも満員のお店に、お客が少なくなっていました。」
    「そして、その蕎麦を一口食べて感じました。随分味が落ちたなぁと。」
    「こんな味ではなかったはずだ。その蕎麦は、
     くちやくちやとして何も私に語りませんでした。寂しかったですね。」

    「私の山の師匠の沼垂山小屋の森田さんが教えてくれたことがあります。」
    「クマさん、お客が店を選ぶんじゃないよ。店がお客を選ぶんだよって。」
    「長年その深い意味がわかりませんでした。だって、店を選ぶのはお客でしょう。」
    「ところがです。魂がこもり語ってくれる味と出会って、
     森田さんが言っていたその意味がやっと分かりました。」

    「きっとその味をわかる人だけがその店の常連となりますよね。」
    「その味に深い深い味わいを込められる主人だけが、
     そうした深い味を味わい、その味と語り合えるお客をお客とすることができる。」
    「つまり、あき乃の蕎麦が、私を選んでくれた。」
    「この深い深い味わいが、どうだクマさんと語りかけてくれた。」
    「だから、私は、ここに来て、今日も蕎麦を食べています。」

    「味わうって、大事なことでしたね。」

    本当だと想った。
    味わうことだ。
    感ずることだ。
    そのことこそが、喜びであり、幸せでもあった。

    だから、人生を味わおう。
    今、ここを味わおう。
    きっと向こうからよく来たねと、語りかけてくれるはずだ。

    「味わう」を味わった至福の時だった。

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