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  • from: クマドンさん

    2017年07月23日 06時20分13秒

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    異生物現る

    昨日は、一日ただぼーっとして生きていた。
    60歳まで後一カ月。
    家でじっとして何もせず、ただテレビを観ながら眠っていた父だった。
    どうしてでかけなすのか。
    どうして外に出ないのか不思議でもあったが。
    実は、それは自然な生活だったと、最近想い至った。

    私は、庭に出る。
    そして、やっぱりそこでぼーっとしている。
    でも、自然とは面白いもので、
    何かかんかと、向こうから声がかかり、鋏をもって動き始める。

    葉っぱの様子で、水加減を感ずるようになった。
    よく考えれば、前日の朝と帰って来てからも、忙しさから水をやっていなかった。
    ハーブの皆さんは、萎れて、横に倒れて瀕死の状態だった。
    ミニトマトの葉っぱも、しおしおとなっていた。
    とにかく水だな。
    ホースを伸ばし、腰を降ろし、シャワーの先をプランタに突っ込んで、
    時間をかけて水をやった。
    そうか、これが一番効率のよいやり方だなと、その時気付いた。

    ふと、目をやると、バラの幹に何やら怪しい姿の幼虫が居た。
    薄緑色。2~3cm位の大きさ。頭と尻とにブラシのような棘が2本ずつ。
    まるで宇宙からの生物のように、そこでもぞもぞうごめいていた。
    私は、すぐに鋏で挟んで、袋に入れた。
    そして、ひょうと葉っぱを見上げたら驚いた。
    何とこの異生物が、
    あちらこちらの葉っぱの上にびっしり張りついているではないか。

    ガーン。
    そう言えば、バラの葉が真っ白になって枯れ、
    最近、葉っぱの数が激減していた。
    夕方と朝とに出会うから、私はこの忍者たちに気付かなかったのだ。
    私は、それから鋏で小枝を切り、葉っぱごと袋に入れた。
    ここにも、あそこにも、こんなところにも・・・・。
    その時だった。
    手袋をとった後で発見した異生物を退治しようと枝を切った途端、
    「いてーーーーーーーーーー」だった。
    何だこの激しい痛みは‼
    左手の中指の背を、激痛が走った。
    ほんのちょっと、その異生物の毛が触れただけなのに。

    ああ、死ぬなと、本気の恐怖だった。
    私の人生は、還暦を前にして、こんな異生物によって不慮の死をとげるのか。
    ああ、何という哀れな人生なのか・・・・・。
    まず、この異生物の正体を明らかにしなければならない。
    緊急の場合は、即、救急車なのだから。
    応急手当は、どうすればよいのか。
    何分後に意識を失い、私の心臓は止まってしまうのだろうか。

    「正体は・・・・・・、あっ、イラガの幼鳥だ」
    「あれが、イラガの幼虫なのか・・・。」
    応急手当も書いてあった。
    まず、まだ針が残っていることもあるので、
    患部をセロテープで何度もはったり、とったりする。
    次に、流水で流す。
    そして、軟膏を塗る。
    痛みが治まるまでには、暫くの時間がかかる。

    私は、それを見て慌てて階下に行き、妻に知らせた。
    「大変だ。イラガにやられた。」
    「ああ、そう。水で流したら。」
    「死ぬかもしれない。どうしよう。」
    「何か塗っておけば大丈夫。」
    「ああ痛みがどんどんひどくなる。どうしたらいいんだ。」
    「イラガって、痛いよね。」
    「えっ、刺されたことあるん?」
    「ちっちゃい頃ね。」

    私は、その言葉を聴いて、死なないことを確信した。
    なぜなら、妻はここにしんなら強く生きているからだ。
    しかし、「イラガのやつめ‼」だった。
    今も庭で袋に幽閉し懲らしめている。

    ただね。イラガの幼虫も生きているんだな。

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