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  • from: クマドンさん

    2017年10月25日 06時19分41秒

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    「パターソン」的な生き方

    「パターソン」 ジム・ジャームッシュ監督 アメリカ映画

    いつもと同じ。
    それって、それなりに幸せなことなのかも。
    ルーテーンだな。
    朝、目覚める。腕時計は6時14分辺り。
    隣には裸のままの愛する妻が。
    カップにオートミル。妻は、まだベッドの中だ。

    バスに乗る。
    運転席で、詩を書く。
    一冊のノートに、詩を書く。言葉をライテングする。
    バスの中に居て、想いはここにはなく、別の世界へ。
    主任がやって来て、家族の壮大な愚痴を聴く。
    「大丈夫か?」だな。

    バスは、田舎の小都市ニュージャージー州パターソンの街を走る。
    街の景色は、いつものように、いつものまま。
    定時にバス停に停まり、様々な乗客が乗降する。
    それをバックミラーで観ている。客の話を聴いている。
    ある日、バスが電気系統のトラブルで故障して、停止。
    彼は、携帯電話を持っていない。
    乗客の女の子から借りて、事なきを得た。
    それが、彼にとっての重大事項。
    ただ、それもなんとなくやり過ごす。

    帰りの途中に、詩人の少女に出会う。
    少女の詩を味わう。いいね。「あなたも詩人?」
    一冊の詩のノートには、大切な言葉が綴られてある。
    彼は、家に帰ると、必ず傾いているポストを真っ直ぐに直す。

    妻は、毎日が新しい。
    壁を振り替えた日。カーテンの装飾を変えた日。
    自分でデザインした奇抜な衣装を着た日。
    実験のようにして創作料理を出す日。
    突然、ギターを通販で注文し、カントリーミュージシャンを目指す日。

    そして、素敵なマフィンを大量に焼いて、市場に売りに行く日。
    彼の妻は、彼にとっては新たなる刺激でもあった。
    ただ、ただ何も言わず。そのままにする。それが嬉しい。それが幸せ。

    夜は、お決まりのブルドックの散歩。
    ドクのバーに行き、いつものカウンターでビールを飲む。
    毎晩、ドクのドラマを聴いた。ドラマを観た。
    熱烈な片思いの失恋男がここに居た。
    ある夜、自分の頭におもちゃの銃を向け、死ぬと言った。
    咄嗟に跳びかかり、組み伏せて、その銃を彼は奪った。
    家のベッドの脇に、海兵隊の当時の写真。

    ああ、そんな彼なのに、何も言わず、ただ日々を受け入れ、
    それを味わい。それがいいなぁと、少し想っている。
    そんな一週間がたった。
    何も無いだろう彼の今日に、何だかいつのまにか私ははまった。
    「好きかも知れない」そんな言葉が、心に浮かんだ。

    街のど真ん中にどでかい岩の滝が在る。
    そこで、彼はよく独りで黄昏、佇んでいる。
    私もそうだ。独りがいい。独りが深い。独りが落ち着く。
    そこへ、四十代・黒いスーツ・黒いメガネ、男性。
    1人の日本人の旅行者が彼のベンチの隣に座る。
    彼も、詩を書いていた。
    日本語の詩は、けっして翻訳しないそうだ。
    そして、彼は、パターソンの大好きな詩人の名前を言った。
    パターソンは、本の少し笑みを浮かべた。

    実は、パターソンは、大事にしていた一冊の詩を綴ったノートを、
    あのブルドックにかみちぎられてしまったのだった。
    書き続けていた、その言葉が、もうない。
    そんな彼に、日本人は、一冊のまっさらなノートを手渡して行った。
    「ハハーン」だな。

    何だろうかなぁ。
    そうして、彼の一週間は、終わるんだ。
    いや、終わりとは、次の一週間の始まり、始まり。
    何だかねぇ。
    パターソンに会いたくなったな。
    あの永瀬が演じた日本人のように。

    彼は、流れて行くものの中で、確かに流れてはいるようだが、
    その流れの中でも、どんなに平凡で、凡庸で、平坦な日々であっても、
    彼は、彼で、そのまま、日々、在る。
    そうやって、中年になり、退職を迎え、老人となるだろう。
    それは、それで、そのままで、いい。

    パターソンとしての生き方は、実にナチュラルな生き方なんだ。
    何事もなく、何事もなし。
    パターソンに、会いたくなったな。

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