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  • from: クマドンさん

    2019年03月12日 05時23分49秒

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    不如一黙

    土日に家族で津南の旅だった。
    津南町田中温泉の一軒宿「しなの荘」。
    いい宿だった。
    おもてなしの心が息づいている。
    心とは、見えないものだが、感ぜられるものだ。
    主人、女将、中居さんと、温かな心が伝わって来る。
    それが、何よりもありがたかった。

    晴天の朝、その小さな集落を歩いた。
    早春の山は、まだ残雪が光っていた。
    白の世界がここにある。
    雪とは不思議なものだと、いつも想う。
    全てのものを覆い隠し、白一色の世界に還る。
    その景色がまた、胸のすく想いがする気色なんだな。
    その景色と出会うと、やはり爽やかな何かを感ずる。

    小さな無人駅だった。
    2時間に一本だった。
    単線の短いプラットホームだ。
    山の中のぽつんとした無人駅。
    それだけでも、何だか物語が感じられた。
    どんな人がこの駅で乗り降りをするのだろうか。
    私も、いつか平日に、電車でこの駅を訪れたくなってしまった。

    橋まで歩いた。
    雪は平年の半分も無いそうだ。
    それでも、やっぱり道の両脇には雪が積もっている。
    その雪には、年輪があった。
    一気に積もったものではなく、幾日もかけて積もった固い固い雪だった。

    橋の上に立った。
    信濃川の上流の雪景色だ。
    渓流の音が絶えず聴こえる。
    何とも心穏やかになる、美しい風景だろうか。
    白い雪の中を、まだ素っ裸の樹木の枝たちが、
    晴天に向かって背伸びしていた。
    春を、こうして待っている。

    ずっとずっと長い長い山地の冬だった。
    やっと春の兆しが見えた。感じた。
    すると、固い固い樹皮を破り、新芽が生まれる。
    まさに、今、ここは、芽吹きの時節だ。
    ああ、四季があることの幸い。

    橋の上から、流れる川面を観ていた。
    すると、小さな小さな泡たちがぷくぷくと水底から浮き上がり、
    その泡たちが連なって、群れとなって、川を下に流れて行った。
    「クラムボンだ」と、私は飛び上がるほど嬉しかった。
    賢治さんが、見たクラムボンに違いないと、私は感じた。
    「ああ、生きているもんだな」と、感動だった。
    「やまなし」の中に登場するクラムボンたち。
    やっぱり自然の中で生きていた。ここに居た。

    帰りに車をこの橋の上に止めて、
    妻と息子たちにも、このクラムボンがカプカプ笑っている様子を見せた。
    感動をしたかどうかは、定かではないが・・・・。

    息子たちは、こうした早春の爽やかな風景を好む人たちだ。
    そこに居ることの喜びを味わえる人たちでもある。
    だから、この橋の上から、しばし、早春を肌で感じる。
    その心地よさに、時を忘れる。

    山に向かうと、真っ直ぐに生きたいと想う。
    川の流れを聴くと、こころがすっと澄むような気がする。
    山も川も、ずっとずっとそうやって生きていた。
    ここに戻ると、いかに生きるかの原点に戻れる気がする。
    山に戻る。川に戻る。
    山を見る。川を見る。

    それは、山に迎えられ、川に迎えられることである。
    それは、山に抱かれ、川に抱かれることである。
    それは、山に見られ、川に見られることである。

    私が、山で、山が、私だ。
    私が、川で、川が、私だ。
    そんな一体感を感ずる。それは、不二であり、一如だった。

    宿の掛け軸の書だ。
    「千言義語 不如一黙」その意味は、いかに、いかに。

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