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  • from: クマドンさん

    2019年11月08日 05時37分50秒

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    オペラ「椿姫」

    水曜日の夜、ブェルディのオペラ「椿姫」だった。
    イタリアのトリエスティ・ブェルディ歌劇場の出演だ。
    本場イタリアのオペラを県民会館で観れる。
    それだけで、心が弾み、幸せ感満載だった。

    吉野家で牛すき鍋を食べ、生ビールを飲み、冷酒を飲み、牛丼を食べた。
    コンサート前の恒例行事だ。
    次に、途中に在る上フルの「テッド」に寄った。
    ここで、ワインをいただくためだ。
    ところが、カウンターに我がヨガマスターが、彼と飲んでいた。
    こんな私的な時間に私のような者がお邪魔してはいけないと、
    二つ席を離して、知らぬふりをして飲むことにした。

    そしたら、発見だ。
    我が愛するノイズムのスター。浅海さんだ。
    何と彼女が笑顔でカウンターの向こうに立っていた。
    彼女はそんなに背が高い人ではないが、
    とにかく舞台の上では、華が在り、存在感が満載で、
    彼女が登場するだけで、その舞台の空気感と光の具合が一変する。
    「もっていってしまう」という、すごい人だった。
    海ケ谷さんと、浅海さんとは、私の憧れの人である。

    その人が、今、ここ、目の前に居る。
    先回の舞台の話ができた。
    米を浴びたあの瞬間に、鳥肌が立った。全身が震えた。魂がさざめいた。
    その光景が今でも心に焼き付いている。
    それほど、惚れている舞台だった。
    ワインを二杯飲み、握手してもらった。
    小さな可憐な手だったな。

    私は、オペラに急いだ。
    開場してからまだ間が無かったので、中高年の長蛇の列だった。
    さもありなん。
    このチケットは高額なために、いつものコンサートとは客層が違っていたな。
    ステータスかな。ハイソかな。オペラとはそういうものだ。

    二階のどんづまり、背中に壁のある場所が私の席だった。
    しかし、ガラガラなのには、何か申し訳なさを感じた。
    私の席の10列前からバルコニーまでの席は9000円だ。
    私の席は6000円。一階のS席は18,000円だった。
    私は、そっとそのがら空きのB席に移動した。
    私の周りは広々と誰一人居ない空間だった。
    指揮者もどきの私にとっては、最高のスペースを確保できた。

    「椿姫」は、ビオレッタとアルフレードの悲恋とばかり思っていた。
    しかし、この物語は人間を描き、実に深い味わいのある物語だった。
    そのことに気付いただけでも、6,000円の甲斐はあった。
    実は、この物語も、父と息子の物語でもあったからだ。

    社交界の華であり、侯爵をパトロンに持つ女であるビオレッタ。
    その女に心から惚れ、愛した若き青年アルフレード。
    その真実の愛に、彼女は生まれた初めて愛することの幸せを感ずる。
    まさに、二人の出会いは、永遠の愛だった。
    しかし、そんな息子を心配するのは、父のジェルモンだ。
    二幕では、父が彼女に会って、「どうか息子と別れてくれ」と懇願する。
    「お前のような女と一緒になったら、大切な息子は不幸になるに違いない」だな。

    彼女は、その申し出を受け入れる。
    張り裂けんばかりの苦悩と悲痛の中にもだえ苦しみながらも、
    彼女の真の愛は、その父親の願いを受け入れることで、
    その愛を終わらせようと決意する。
    彼は、愛する彼女に裏切られ、自暴自棄なり、パトロンの侯爵と決闘する。

    そして、数年後、貧しさの中で結核に侵されて明日をも知れないビオレッタ。
    そこに、手紙が届き、アルフレードが訪れる。
    切ない愛の歌声が響く。
    その時、父も訪れる。
    そして、心無くもこんなにも酷いことをしてしまった自分の罪を悔い、
    彼女に謝罪し、赦しを求める。

    彼女は愛するアルフレードに抱かれたまま、息を引き取る。
    そのラストが秀逸だった。
    光り輝き、力に充ちて、喜びをもって死に旅立った。
    ビオレッタの死は、幸せの絶頂で訪れた死だった。

    その健気さ、一途さの愛を貫き、
    アルフレードの幸せの為に身を引き、自己犠牲をはらい、どん底にまで落ちた彼女。
    人生は、かくもあるものかの、何とも言えぬ、悲しみと悼みと深い共感。
    しかし、その彼女の死は、光り輝き、神様に抱き取られ、天に昇った。
    彼女の自己犠牲の愛は、天に祝福され、報いられた。
    このラストのために、「椿姫」の物語は、在る。

    私は、劇の途中でどれだけ涙したことだろう。
    大好きな歌は、小さな声で口ずさみ、
    マエストロの指揮棒と同じ指揮を客席でした。
    私だけのこのスペースで、私だけのオペラを十二分に堪能できた。
    「ブラボー」は、何度も何度も私が叫んだ。
    舞台はいいな。オペラはいいな。物語は人生そのものだなの実感だった。

    愛は、自己犠牲だ。
    ビオレッタは、見事にその愛を全うし、この世の定めを引き受けて、耐えた。
    愛するが故に、その愛を現実に全うすることを諦め、離れた。別れた。
    それは、愛する人の幸せのためだった。
    その真実の愛に父ジェルモンは、気付いた。
    こんなにも愛する息子を自分の命をも犠牲にしてまでも愛してくれる人がいた。
    その人に対して、彼は、惨いことを言い、二人を別れさせた。
    しかし、父なら、きっとそうするだろう。
    ジェルモンは、ただ他の父親たちがすることを、しただけだった。

    しかし、ジェルモンには、懺悔が在る。回心がある。悔い改めがある。
    それは、ビオレッタを通しての神様からの贈り物だ。
    私は、アルフレードではない。
    もうそんな歳ではない。
    ただ、きっとビオレッタのようなピュアな女性を好きになるかもしれない。
    今は、私は、ジェルモンの気持ちだ。

    不思議な愛を描いたドラマだった。
    やっぱり、オペラはブェルディなんだと、ブラボーだった。

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