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  • from: クマドンさん

    2020年02月11日 06時32分41秒

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    安先生という生き方を

    「心を癒すということは」
    安先生の最終回を、やっと見ることができた。
    阪神淡路大震災で、精神科医として彼は、自分には何ができるのかを問うていた。
    傷や病は、目には見える。
    だから医師が治療を行い、看護師がケアをする。
    それが医療だった。
    それでは、精神科には、その医療は無いのか。
    この災害の最中に、被災者の人たちに対してできることとは何か。

    彼は、そのことを見つけるために、避難所に精神科の療養所を開設した。
    しかし、精神科を訪ねて来る人は、皆無だった。
    私も、鬱になり、精神科に行った時は、
    もう決してこの社会には戻れないのだと、何だか覚悟を決めていた。
    ここに来ることは、世の中から違った場所に隔離されるような、
    何だかそんな疎外感と別な人になってしまうと言う怖れとを感じたものだ。

    安先生は、自分から被災者の家族の傍に座った。
    ただ「いかがでか」「困っていることはありませんか」「辛くありませんか」
    そうやって傍らに佇んでいる。
    しかし、人は、弱音を語ることを恥ずかしいことと思っているのか、
    心の悲しみや傷には蓋をして、自らも気付かないようにしているようだった。
    だから、その隠している涙や痛みに触れられたくないために、
    かえって頑なになり、「迷惑だ」と、逆に離れていくようだった。

    しかし、心は、確かに傷ついている。
    私もそうだった。
    この深く深く傷ついても、血を流すこともなく、傷口を開くことも無く、
    でも、傷ついたままのこの心を、
    自分でもどうして善いのか分からないまま、
    そのままにして、見過ごしにして、一層その傷を深く深くする。
    ある人は、その時、アルコールに依存する。
    その傷の痛みに耐えかねて、家族への暴力となることもあるだろう。

    人は、心に傷を作る。
    さて、その時、どうするか。
    その治療方法や処方箋が、未だ確かでなかったあの時代だった。
    今では、心療内科の予約は何カ月待ちらしい。
    そんな時代がやっと来てくれたのは、
    暗中模索で何かにたどり着いてくれた安先生たちのおかげさまだった。

    そんな彼が、癌になる。
    ステージ4だ。手術も出来ない。抗がん剤による治療だけ。
    何百分の一の生存確率に恐怖すら覚える。
    厳格な父は、胃癌で即亡くなった。
    彼には、遺されている時間が少ないことが、分かっている。
    病院に向かうタクシーから、いつもの街の朝の風景が見える。

    子どもたちが学校に登校する。
    ポプラの黄色な街路樹だ。
    その向こうに復興した神戸の商業都市のビルの重なりが見える。
    みんな普段と変わらない、いつもの朝だ。
    しかし、何だかその当たり前の風景が、とても愛おして、眩しく、輝く。
    「みんなには、また来年があるのだな」
    私は、入院して、この気持ちがよくよく分かった。
    「病院で死ぬと言うことは」という映画があった。
    生きているということは、決して当たり前のことではない。

    癌になり、余命宣告を受けた後、誰もが絶望と嘆きを感ずる。
    しかし、その内に、その癌すらを受け入れる気持ちに変わる。
    フリーになったKアナが、癌の闘病を記録に撮っている。
    彼は言っていた。
    「癌になって善かったとは思わない。けど、癌になったから気付いたことがある」と。

    安先生は、腹水を抱えたまま、自宅に帰った。
    「やらねばならないことを、やり遂げたいからだ」
    娘に一輪車を教える。
    生まれて来る三人目の子のための名前を考える。
    彼は、幾つかのことをノートに書き記し、
    自宅での貴重な時間をそのことに費やし、没頭する。

    いつ激痛が来て、最期を迎えるかは、彼も妻も知らない。
    しかし、今、ここでは、束の間であろうとも幸せを感じられる。
    それは、安先生が、深く深く妻と子とを愛しているからだった。
    その愛を説明はできない。
    それは、安先生が終子さんを抱きしめるその姿に顕わになるものだ。
    安先生の眼差しから感じられるものだ。
    安先生は、自分の死がすぐ近くに来たとき、
    愛と言う生きる人にすっかりとなっていた。

    もう一冊、本を書こうと意気込んでいた。
    自分は何もやっていない。何も遺していない。と大泣きをした。
    しかし、不思議だ。
    終子さんと三人の子どもたちの魂に、
    安先生は、生きている。
    ドラマのラストで三人の成人になった子どもたちが登場した。
    三番目の娘さんの名前は、「灯」と書いて「あかり」と呼ぶ。

    愛は、遺るんだ。
    愛は、魂から魂に伝わって行くんだ。

    この世に確かに在るのは、愛だけなんだ。

    では、私は、その人になれるか。
    何だか、今は、なりたいと、思っている。

    安先生、ありがとうございました。

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