サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。
-
from: クマドンさん
2020/05/13 06:41:47
icon
ある像の家族の物語
昨日は、暑かったのか。
自分ではそんなにも感じなかったのだが、
午後から疲れが出て、何だかお腹の調子もよくなく、
仕方ないので布団に入って横になっていることにした。
こうした生活が始まって、一カ月余りとなった。
何も無い。何もしていない。
そんな生活であるが、それなりに不思議な充実感を感じている。
4時にはラジオ深夜便で「明日への言葉」を聴いている。
大事な言葉を忘れないために、メモを取りながらだ。
そうやって生きるための言葉を自分のものとしている。
エックハルト説教集もそうだった。
二度目のサイクルに入った。
それでも数ページずつしか進まない。
大事な言葉に出会うと、
その「意味」を考えながら読んでいるからだ。
その言葉を書き写すことでも時間をかけている。
新聞もそうだった。
今、ここ、何が起きているのか。どう生きたらよいのか。
いろいろな立場・役割・年齢の人たちの言葉がここには満載だった。
私は、短歌まで読むようになった。
そこにも、その人なりの生き方が現われているからだ。
言葉によって、私は生かされているようにも感ずる。
もし、言葉が無かったとしたら、
私は、どう生きていることだろうと想う。
言葉によって私は、考える。
池田晶子が言った。「悩むな、考えろ」だな。
言葉を通して考えることは、人間の特権でもある。
ならば、「より善く生きる」とはどういうことなのか、
私は、その経験から学んだ先人たちや同時代を生きる人の言葉から学ぶ。
実は、学んでいるのは、その人の生き方であり、
今、ここから、私がどう生きたらよいのかの私の生き方そのものだと想った。
アフリカの像の群れの旅のドキュメンタリーだった。
数カ月にわたり乾期の大地を、水を求めて旅する像の家族の物語だ。
生まれたばかりの赤ん坊も一緒の旅だ。
しかし、背負うことも、抱っこすることもできない。
生き抜くためには、母親たちと、共に歩まねばならない生きるための旅だった。
ライオンの群れが獲物を求めて待っていることもある。
オスの身体の大きな像が威嚇する。
群れではとうていかなわないことを知っている。
しかし、群れから離れる像も居る。
ライオンたちはその像を待っている。そして、しとめる。
この赤ちゃんのお姉さんの像は、その餌食となってしまった。
まだ生きているその娘を、母親はじっと見つめる。諦める。
像のリーダーは、何百キロの道程を、自分の記憶だけで旅をする。
驚いたことに、何年前に旅をしたこの道程を覚えているのだ。
リーダーは、毅然として、迷うことなく、水へ群れを導いて行く。
一日に160ℓの水を飲まないと像は死んでしまうそうだ。
あの身体の大きさだ。灼熱の太陽が照り輝く荒野である。
大河に出会うと、水浴びをして、存分にその水を飲む。
それでは、ずっとそこで暮らしたらよいのにと思うが、
一か所に長くいると、その土地の草がなくなり、荒れ果てることを知っている。
だから、次の水場を求めて移動するそうだ。
大河を渡る時は命懸けだ。
大人の像も泳がなければ渡れない深さだった。
大人たちは小象を真ん中に入れて、守りながら河を渡る。
実は、像たちは家族同士の親愛の情がとてもとても深い動物だったる
お互いにお互いの命を守りながら生きる。
時には、子を助けるために母親が犠牲になることもある。
像たちがやっとたどり着いた場所には、水が枯れていることがある。
ほんの少し前まで川であった場所に、水が流れていない。
砂と岩のその場所にたどり着いた像たちは、死にそうなくらい喉がからからだ。
リーダーが、自分たちより前に訪れた群れたちが、穴を掘っていることを発見した。
鼻で水の匂いを嗅ぎ、そこを足でせっせつ穴を掘る。
リーダーが疲れると、他の大人の像が代わる。
すると、その砂の底から水が染み出て来る。
ここで、大人の像が、初めの新鮮な水を飲んだ。
突然、リーダーは怒り、その像を押しのけた。
ます初めに一番弱い子どもにその水を飲ませることがルールだった。
像の群れは、弱い像を助け、その像を守るようにして移動している。
年老いて、歩くのもやっとな像がいた。
それは、この群れの像ではなかった。
その像は、群れの速さに付いていけなかったのか、
自分でそうする道を選んだのか、
独りゆっくりと、よたよたとサバンナを歩いていた。
こうして像は、死期を自分で知ると、群れから離れて、倒れて、死ぬそうだ。
その身体をハイエナたちがむさぼり食べる。
それは、それで、善しとする。
ある日、群れからはぐれたメスの小象と出会った。
この小象は、この像の家族の仲間に入れてもらいたいために、
その家族のあとを、付かず離れず移動する。
さて、どうするかは、リーダーが決めることだ。
自分たちの小象を守るだけでも必死なのに、
見ず知らずの小象を守って移動するだけの余裕はない。
しかし、本当にしばし、リーダーはこのはぐれた小象をじっと見つめるのだ。
そして、どうすべきか、思案するのだ。
そして、彼女を招き入れて、家族の一員として移動を始めた。
いつものように赤ちゃん像の隣の位置に彼女を入れた。
そして、群れは黙々と旅を続けた。
そして、とうとう待ちに待った雨期が来た。
スコールかこの大地に降り注ぐ。
大河が生まれ、氾濫を起こす。
その約束の地には、この季節だけ広大なオアシスが生まれる。
リーダーは、このことを知っていた。
だから、迷わずにこの家族を引き連れて、500キロの旅をする。
そのリーダーが、何だかとても気高く、神々しく思われた。
彼は、真っ直ぐに、この家族たちを、この楽園に導いたのだ。
さて、像には「言葉」はないはずだ。
だから、地図もないし、書物ももたない。
そして、この道を行けば必ず楽園に至ると教えられることも出来ない。
しかし、こま像の群れたちは、苦難の旅を経て、楽園に至った。
それを、本能と呼んで、片づけてもよいのだろうかの「問い」だった。
何だかとてもとても深い愛と真実とが、
この像の家族の旅には現われているような気がした。
そこことに感動したから、この映像作家は、この群れを追ったはずだ。
深く深く人間である私を感動させるもの。
そして、この像の家族から私が学んだもの。
それこそ、「生き方」そのものではないだろうかだった。
この像の家族に感動するわたしと、
像のリーダーや母親であるわたしとは、
どこかでシンクロし合っているような気がした。
そのわたしであるわたしは、一つのわたしなのではないか。
私は、観終わってから考えた。
「死に行くものとしてのわたしをどう生きて行くか」と。
これは像の家族が教えてくれたことだった。-
サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。 - 0
-
サークルで活動するには参加が必要です。
「サークルに参加する」ボタンをクリックしてください。
※参加を制限しているサークルもあります。 - 0
icon拍手者リスト
-
コメント: 全0件