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from: クマドンさん
2020/05/16 07:09:44
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タクシーのある法則についての物語
金曜日だけは、昼飲みに出かける。
それを一週間のご褒美としている。
緊急事態宣言が解除になった。
またまだ三密を避け、マスクをつけ、新しい生活スタイルの継続だ。
バスに乗っても、窓が開いている。
停留所では、ドア全開だ。
そうやってお互いが、お互いのことを気遣って生活する。
かえって、見ず知らずの人の存在に心を配るようになったのではないだろうか。
ソーシャルデスタンスである。
「あき乃」に行ったら、窓際の席の位置が変わっていた。
今までは、窓を横目に見ての椅子の位置だった。
それか、もろに窓に向かった1人掛けの椅子席となった。
独りで食事する私には、もってこいの特等席だ。
蕎麦焼酎を飲む。
そして、山菜の天ぷらを食べる。
美味しい小千谷蕎麦を味わう。噛みしめる。
これが、私の至福の時だった。
そして、窓から見える通りがかる人たちの人生を感ずる。
まさに、それは瞬間であるが、一冊の本だったる
みんなみんなその姿から、味わいのある滋味を感じさせる。
その人生を想像することも、この席での喜びだった。
向かいの毛糸屋さんKと言うお店の店主がいい。
50代、ちょい悪叔父、パツパツのジーンズに、真っ赤なスニーカーだ。
髪はオールバックに決めている。
いつもいつも店の前の歩道に立ち、お客を心待ちにしている様子だ。
老舗の毛糸屋さんのお客は老舗の年齢の叔母ちゃんばかりだ。
店内の商品を眺めて、何も買わないで出て来る人も居る。
客商売とは、こういうものなのか。
彼は、そうした日常に翻弄されず、いつものように店頭で客を待つ。
すると、おかしなことに気付いた。
以前からこの店に来ると、私の前には真っ白なプリウスのタクシーが居る。
昨日もそうだった。
マンションから出て来る客を待っているのか、
店の近くで止まっている。
ところが、誰も客を載せないで、すーっと音も無く走り去る。
何だかその挙動が気になったので、心の片隅にそのタクシーを置いといたる
すると、しばらくすると、Iタクシーという名前のタクシーがまたやって来た。
「へぇ、この辺りを流しているのか・・・」と、思いながら蕎麦を食べていた。
そしたら、5分近くでまたそのタクシーだ。
すると、その後に同じ真っ白なプリウスのSタクシーがやっ来た。
そして、しばらくしたら、今度は同じ白いプリウスのZタクシーだ。
その瞬間、私の好奇心に火がついた。
「これは、一体、何だ」の法則だ。
まだ先頭のIタクシーが、スピードを落としてやって来た。
そして、Zタクシーが間隔を空けて登場する。
Sタクシーの姿が見えない。
お客を載せてどこかへ行ってしまったのか。
すると、その内にまたIタクシーが周回して来る。
まだ、Sタクシーも追尾する。
そして、新規のDタクシー(これはガス車)が、参入した。
そんなことが5回以上続いた。
「これは、何だが」「これは面白い」にいつしか変わった。
隣のチーズとワインの名店「J&Y」のカウンター。
ちょっぴりお高く、美味すぎるイタリアワインを飲みながら、
チーズの盛り合わせをかじり齧りだった。
ここのチーズは、ここだけで食べられる絶品のチーズだった。
ブルーチーズが美味いし、山羊のチーズがこれまた美味い。
私が居たら、レクサスに運転手付きの社長なのか、
そのチーズをお買い求めに立ち寄っていた。
その店の店主に、その法則について語った。
するとウインドー越しに目の前の本町通りを、
今、話したばかりのIタクシーが通り過ぎた。
一通だから発見しやすい。分かりやすい。
「いいけ。次に、Sタクシーが来るよ」
そう言っている間に、そのタクシーがゆっくりとしたスピードで通り過ぎた。
その内に周回して来たあのIタクシーがまたやって来る。
「これで3周目だな・・・」
そんなこんなするうちにDタクシーが割り込んで来た。
いつしか二人して、このタクシーの動きが面白くなり、笑い転げていた。
「これって、一体、何なのか」
そこで、その一冊のタクシー物語の「意味」を推理した。
まず、この本町は買い物をしたお年寄りが歩いている場所だ。
そのお年寄りたちは、あれもこれもと買うために、
両手に重たい買い物袋をぶらさけで歩く。
買い物に疲れ、歩くことに疲れたお年寄りは、歩きたくなくなる。
すると、Iタクシーだ。
きっと何度もお世話になっている顔見知りの運転手さんだ。
手を挙げる。「お願いします」と、後部座席だ。
ヨウカ堂で安売りの服を買ったのに、その分をタクシー代金に使う。
こうしたお年寄りは、山の下には居ないという推理だった。
Iタクシーは、だから待機しているよりも、
お客に恵まれることの多いこの本町通りを自分のテリトリーとしている。
だから、西堀とこの通りを毎日何十周と周回している。
まれに、関屋や小針等の長距離のお客さんと遭遇することもある。
客待ちの心理は、毛糸屋の店主と同じだ。
Iタクシーの方が、より攻撃的であるとのことだ。
そのテリトリーに、Zタクシー・Sタクシー・Dタクシーが参入する。
そこで、競争が始まり、お客の争奪戦が行われる。
しかし、ここは、一通だ。追い越すことは不可能だ。
つまり、まるでメリーゴーランドのようにしてね
その順番を順番のまま、マグロのように回遊をする。
その法則をお互いに了解し、いつしか共存共栄を図る仲となった。
これが、推理3だな。
その内に、店主と私で、このIタクシーの親父さんを応援したくなってきた。
あの親父さんに少しでも遠方のお客さんをつかまえて欲しい。
そんな「エール」を2人で送るようになっていた。
ここで生まれたのは、「連帯」であった。
あの親父さんものコロナで客足がばったりと減り、困っているはずだ。
だから、ここならばという本町通りをテリトリーに決め。
「いつか、必ず」と捲土重来を夢見て、周回を続ける。
「応援ののぼり、立てたらどうですか」
「Iタクシーさん、頑張れ」「iタクシーさん、お休み処」なんてね。
支援とは、その人の苦労と根気に対する共感の気持ちから生まれるものだ。
一所懸命に仕事をしているこの親父さんには、
支援の手を差し伸べたくなってしまった。
「車券を売ったらどうだろう」とのアイデアが次に生まれた。
「先頭はまず、Iタクシーに決まっていても、二番手にどのタクシーが来るか」
「まぁ、連勝でその車券を販売する」
「すると、二番手に対してのオッズが存在するはず」
「ところが、一番人気のIタクシーが、お客を載せて抜けることもある」
「すると。このレースは大荒れとなり、大穴が生まれる」
「その収益金をお客さんにギフトする。または、Iタクシーの支援金とする」
とうとうこの物語は、「車券」へまで発展を遂げた。
面白かったなぁ。
そんなこんな話をしている内に、Iタクシーが暫く消えて、
Dタクシーの突然の参入だった。
「ほら、万車券だ」
このことを「親父たちよ」に書くよと、店主に約束をした。
とてつもなく素敵で、気持ちよく、チーズが美味い小さな店だ。
しかし、一度はぜひ、このカウンターに座ってワインを飲んでもらいたい。
そして、しばらく、本町通りを眺めて、
ここの記したタクシーたちのデッドヒートの攻防戦を眺めてもらいたい。
そんな楽しみもあるイタリアンのお店は、なかなか無いぞ。
今日も、きっと、あの周回は続けられる。
次のレースの連勝は、「I・Zで決まりだな」
書いたよ。読んでくれましたか。また、行きます。レースが楽しみです。-
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