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親父たちよ

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  • from: クマドンさん

    2020年07月12日 08時55分49秒

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    何かできることがあったはずだ

    さてさて、5時に目覚めた。ぼーーっしていた。
    どうもやっぱり飲み過ぎだったらしい。
    6時45分発の電車だった。
    それまでは1時間15分、小千谷駅前の「和田」で蕎麦と天ぷら、カツ丼だった。
    ちょぼちよぼと銚子から、冷酒を猪口に注いだ。
    蕎麦と日本酒。かつ丼と日本酒。合うんだなぁこれが。
    ここのカツ丼は絶品だった。
    肉厚のお肉にカリッとした衣。そして、出汁の味がまぁ、美味いこと、美味いこと。
    腹が許せばもう一杯、おかわりしたかったな。

    いつものように電車に乗ったら記憶が無くなった。
    覚えているのは、乗換の長岡駅のホームでの駅員さんとの会話と、
    新潟駅での「にいがたーー。にいがたーー」のアナウンスの声だけだ。
    つまり、気がついたら「和田」から、突然の新潟駅のホームだった。
    狸に出も化かされているような心持だった。
    そして、気付いた。
    「ない。ない。傘がない」
    大事にしていたあの傘が、私の座っていた座席にも存在しなかった。

    井上陽水か・・・「傘がない・・・」哀しかったな。
    しかし、ついも思う。「そんなもんだよ」と。
    私は、手に持っていたものを手放すと、
    その物をどこに置いたのかすっかり忘れて、
    探すのに大分大分無駄な時間を費やしている。
    職場に行く度に、何か盛って来るべきものを忘れていることに気付く。
    ちゃんとチェックすればいいのに、ちゃんとチェクしたのにだ。
    昨日はバックを忘れたために、コンビニで袋を買い、
    無印良品で、500円のトートバックを買った。
    その中には、ごっそりとアルミ缶の酒・酒・酒だった。

    そんなおかげで、「親父たちよ」が今、この時刻だ。

    その旅の始まり、新潟駅での出来事だった。
    私が待合室のあるフロアーを歩いていると、警察官が1人駈けぬけて行った。
    そしたら、また左から数名の警察官が駆け込んで行った。
    これは、事件だ。
    今、ここで、何かあったんだ。
    その警察官たちは、男子トイレに入った。
    その前で女性の警察官が無線で何か話していた。

    トイレに入ると、1人の60代後半くらいの男性が怒鳴っていた。
    「この男が、殴って来たんだ」と、警察官にしきりに訴えていた。
    その横を二人の警察官に両手を掴まれた20代前半だろうか、
    青年がおどおどと強張った顔で背中を丸くして、逃げようともがいていた。
    私は、彼を見て、一目で分かった。
    彼は、自閉の子だ。あの目は、絶対にそうだ。と。
    何だか彼に対する警察官の態度に、
    彼の持つ発達障がいに対する配慮が全く感じられなかった。
    私は、私の後ろで事情聴取していた若い警察官に言った。

    「あのぅ、彼は、自閉の子だと思います。」
    「彼は、今、とてもとても怯えています。」
    「もっと怖がらせないような対応が必要だと思います・」
    その警察官の、そのことは察していたようだった。
    しかし、両手を掴み大きな声で「やめなさい」と言っているベテランたちには、
    その認識は無いように感じた。

    私は、心配だった。
    しかし、私にできることは限られていた。
    私は待合室に居た。
    すると、彼が三人の警察官に連れられて入って来た。
    1人は私服で、大きな男だった。刑事だと思った。
    彼は、座らされ、両手はしっかりとつかまれたままだった。
    「鞄の中を見るよ」
    すると、かれは、手をふりほどき、その鞄を取り戻そうとした。
    また、大きな声で叱られた。
    「ただ、中を見るだけだから」と、鞄は開けられ、中のものを調べられた。
    彼は、その間、不安と恐怖の最中であった。

    彼は、今、自分自身に何が起こっているのか分からないだろう。
    このおっかない、声のでかい大人たちが、誰なのかも分からない。
    とにかく、ひどい目に合わせられ、恐ろしさに身体を震わせている。
    事情を話そうにも、彼には言葉は無かった。
    筋道を立てて、初めから今、トイレで起ったことは、話すことは不可能だった。
    彼は、自閉の子なんだ。
    どうして、この大人たちは、そのことを感じられないのか。
    彼は、今、恐怖なんだ。
    彼は、大人たちに囲まれて恐ろしいことをされて震えているんだ。
    私は、助けたかった。
    しかし、私は、その様子を見て、数分突っ立ったままだった。

    近くにあの女性警官が居た。
    「あのう、あの人は、きっと自閉症の人だと思います。」
    「あんな強い態度ではなく、もっと配慮した対応が必要だと思います。」
    彼女は、そんな私を怪訝そうな目で見つめた。
    「関係者の肩ですか。あの人のことを知っている人ですか。」
    「いえ、私は、ただ特別支援教育にかかわっている者です。」
    「だから、あの子がどんなに困っているか、分かります。」
    「あなたから言ってもらえませんか。あの人は、自閉症の人だと」

    しかし、私には8時51分の電車に乗る約束があった。
    5分前だった。ホームまでの階段もある。
    私は、そう言っただけで、その人を後にした。

    電車が動き出した。
    私は、哀しくて、涙が流れた。
    もっとあの人のためにできたことはなかったのかと。
    私が身分を名乗って、あの人の話を聴いて
    あげることができなかったのか。
    笑顔で接して、私のことを認めてもらい、
    ゆっくりと事情を聴くこともできたのではなかったか。
    私は、あの人を、守ってやれたのではなかったのか・・・・。

    今頃、どうしているだろう。
    いくら大人たちが尋問しても、彼は「うう」とか「ああ」とかで、
    きっと何も事実をつたえられなかったかもしれない。
    その応対に大人たちはもどかしさを感じ、怒鳴ったかもしれない。
    するともっともっと恐怖にかられ、彼はパニックになっただろう。
    そうしたら、また男たちにつかまれる。押さえつけられる。
    反対なんだ。やっていることが反対なんだ。
    彼にしてはいけないことたけを、彼らがやっている事実に気付いていない。
    それは、彼には、やってはいけないことなんだ。

    しかし、彼が、突然、見ず知らずの男を殴ることは、あり得るだろうか。
    ない。絶対にあり得ない。
    ただ、こういうことはある。
    彼がその男から触られたり、嫌なことをされたり、掴まれたりしたら、
    きっと彼は、「嫌だ」と、腕を振り回したかも知れない。
    その手が、男の顔に当たった。
    「殴られた。警察だ。」その男は、すぐに110番した。
    そして、警察官たちがすくさま現場に駆け付けた。

    その後に、私も入った。
    男は、「こいつが突然殴って来たんだ」と息巻いている。
    向こうには両手を掴まれて逃げようとしている彼が居る。
    一目で、どらが被害者で、どちらが加害者だとすぐに分かる。
    他のそこに居合わせた人も、「あいつが、やった」と証言できる。
    しかし、真実は、どうなのか。

    自閉症の人に対する理解と、その人たちとかかわった経験がなければ、
    そのことは、絶対に分からないことだ。
    「変なやつ」「おかしなやつ」それだけだろう。

    誰が、この人たちを社会の無理解・誤解から守ってやれるのかの「問い」だ。
    あの彼は、今、どうしているのだろなぁ。
    あの男は、訴えないで欲しいなぁ。

    何だかとてもとても自分自身の「無力」「非力」を感じた。
    「何をやってんだ・・・俺は・・・」
    「もっと何か、やれることは、あったのではないのか・・・」
    「お前は、見過ごした・・・。」

    電車は、どんどん長岡駅に近づいて行った。

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