確かに、幾つになっても勉強だ。
学ぶことを止めた時、人間が止まる時なのかも知れない。
鳥が羽ばたくように、海が轟くように、人は学び続ける。
そのことを、私は、歳をとればとるほど、大事な事だと思っている。
学ばなくなったら、それは、その人が死ぬ時なんだな。

生きたまま死んでいる政治家や官僚が多いのは、
みんな謙虚に学ばなくなったからだ。
権力を持つと言うことは、自分の思い通りに人を動かせるということだ。
自分の隠された罪を暴かれないために、友人を検察庁長官にする。
どんな悪事でも、世間が気付かなければそれでいい。
もし、週刊誌にかぎつけられたら、「記憶にない」「知りません」で国会で言い通す。
この人たちは、ある日から、謙虚に人間を学ばなくなった人。
つまり、死んだ人たちだ。

今回のリーデングで、私は、ぼこぼこになった。
しかし、そのぼこぼこ感が、とても新鮮で、嬉しい事でもあった。
とにかく、「そうではない」「こうするんだ」「もう、一回」
そうやって、何度も何度も繰り返し、同じ台詞を言わされた。
いや、言わされていると感じている内は、まだまだだった。
言っている。言うことを味わっている。そうやって、自分から進んでやる。
これがねなかなか出来ないことだ。

「何でこんなことを言われなければならないんだ」
「そんな事言われても、私に出来るはずはないではないか」
「その言葉は、こう言った方が、もっと気持ちが現われるのではないのか」
は、一切捨てる。思っても駄目。感じても駄目。
とにかく、「はい」「分かりました」「やってみます」しか、ここには無いな。
つまり、自分なんかいらないと言うこと。
この師匠の前で、何が自分の稚拙な解釈・感情か。
そんなものが、邪魔になる。そのために、素直に入らない。腑に落ちない。

とにかく、口伝で教えてもらっている間は、自分を消し去る。
無とか、空とか、それだけになる。
空っぽにしておかないと、また例の「俺が」がむずむずと仕出す。
そしたら、私の負けなんだ。
先生は、そんなことは、お見通しだ。
だから、じっと私の目を見て、話しかける。
つまり、この伝えようとする思いが、私にすーっと入っているかどうかは、
その私の目を見ていたらきっと感ずると思うからだ。

私には、反発しよう。言い返そう。そんな気持ちは、少しも無かった。
まぁ、微塵位はあるから、全く無いとは言えないが。
習うとは、教えてもらうとは、まず、学ぶ側の素直な気持ちが大前提だ。
その事を、数多の苦い経験で知っているから、私は、学ぶ時には、ただ学ぶ。
そして、少しでも言われていることを体得できるように、思考するだけ。
「それは、おかしい」ではなく、「へぇ、そうなんだ」だ。
「私ならこうする」ではなく、「よしっ、やってみよう」だ。
見よう見真似とは、よく言ったものだ。
本当に素直に学ぶ子しか伸びないことも、私は教師の経験からよく分かる。

そして、そうやって学んで生きていれば、日々、新たな歓びを感じつつ生きられる。
いつも無常観を胸に感じて生活すると、本当に、出会ったものは何でも先生だった。
確かに、舞台では、やっちまったと凹んでしまった。
しかし、それは、学んだことをやり遂げられなかったからであり、
自分勝手に、我がままに演じたせいではないことは、分かってもらいたい。
ただ、言われたように出来なかった。
ただ、自分がどこかで勘違いしてやっちまった。それだけだ。
だから、先生にはただただ申し訳なく、何とも言えない済まなさでいっぱいだ。

ある人が「クマさんは、謙虚に学べてすごいね」と、言ってくれた。
しかし、63歳。一体何が出来ているのかの問いだった。
「俺が」等と言い出したら、周りの人はさーっと引いて、誰も相手にしないだろう。
あの威張っている政治家や官僚たちは、そこで人生の落とし穴に落ちてしまった。
そしたら、誰もその人を相手にしない。権力がその人から失われたからだ。
元何とかで、まだまだ威張っている人は居る。
しかし、現職でみんな頭を下げたのは、その職名と権力がその人にあったからだ。
Sにしろ、Nにしろ、テレビに映るあの顔は、人間的に劣化した顔だな。
こんな人間がこの国のトップに立ち、裏では勝手な事を料亭で行って、へらへらしている。

あれが学ばなくなった人間の哀れな末路だ。軽蔑はされても、尊敬はされることは無いな。
日々、新たに学ぶは、あの劣化した人間たちの対極を生きる人たちの生き方なんだな。