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  • from: クマさんさん

    2010年09月17日 05時35分18秒

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    一杯のお茶

    朝、下に降りると母が台所に立っている。
    「おはようございます」の声に、「おはようございます」と答える。
    朝食の準備に余念ない妻の横で、いつものように立ち働いている。
    時には庭に出て、落ち葉を掃いていることもある。
    暑かった今年の夏も、おかげさまで外回りはいつもきれいだ。

    朝食の時、ニュースを観ながら会話する。
    父のことや、親戚の叔母さん、孫の話である。
    何気ない話だが、心に残ることがある。
    そんな話は、職場へ向かう車の中で反芻される。
    朝食には、宮尾さんの卵が出される。
    移動販売でくるお兄さんから、毎週母が買ってくれるものだ。

    朝食後には、熱いお茶を母が出してくれる。
    そのお茶を飲んでから、出勤のための支度をする。
    出勤の恒例行事は、子どもたちとの握手である。
    最近は予備校生の長男は、寝ていることが多くて残念だが、
    次男とは、彼を追っかけても握手している。
    その握り返す強さで何かを感ずる。
    父には「行ってきます。お願いします」と声をかける。
    父は、時にはその声が聴こえず、
    両足を投げ出して座ったまま、黙っていることもある。
    もう一度大きな声で「お願いします」と言うと、
    「ああっ。行ってらっしゃい。御苦労さま。」と返事する。
    母に挨拶すると、一杯のお茶が用意されている。

    車庫で車を出す間も、母は見送ってくれる。
    車を出してから、シャッターを下ろすために戻ると、
    母が手を振ってくれる。
    「行って来ます。」
    「気をつけてね。」
    ガラガラとシャッターを閉める。
    私は車に乗り、アクセルをゆっくりと踏む。

    この実家に帰ってから15年間。
    そんな朝が平穏無事に続いていた。
    あっ、そうか。
    こんな当たり前のことが、とてもとてもありがたかったんだなぁ。
    と、遅まきながら今は想う。

    家族が、家族と共に暮らせる時間は思ったよりは短いものだ。
    それぞれがそれぞれで何事もなくつつがなく生きられたから、
    こうして「おはよう」といつもの朝を迎えられる。
    しかし、家族と居られる時間は限られていると想ったほうがいいようだ。
    お互いに喧嘩している時間はないのだ。
    ここでもやっぱり聖徳太子である。

    ささやかなことで想いを伝える。
    一杯のお茶を飲めるのは、後二週間だけになってしまった。

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    秋桜

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